5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

( ´_ゝメ)パラドックスが笑うようです

1 : ◆UhBgk6GRAs :2009/06/15(月) 20:24:01.93 ID:HzwlrCb/0

纏め様
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/paradox_scorn.html
ttp://vipmain.sakura.ne.jp/574-top.html

いろいろとごめんなさい。
作品は嫌いにならないで欲しいです。
投下しますです。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:24:56.22 ID:mPISAtAmO
ktkr

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:25:25.10 ID:ri0sEXHwO
支援

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:25:57.99 ID:QCYShmvZO
ヒャッハァー
早くしろおぃ
支援

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:26:28.29 ID:HzwlrCb/0

 めでたくツンを仲間にした日、別れ際に『そんな装備ではパダ山脈は越えられない』という痛い指摘を受けた。
金さえあれば俺だってもっとまともな装備をしているはずだ。そう言い返すと、金を貸してやると彼女の方から申し出た。
仲間が出来て装備も買えるなんて、願ったり叶ったりだ。

 同じ日に、モコロコからダイヴァーという商店通りがあるのを聞いていたので、
あの酒場での乱闘騒ぎの翌日、ツンとそこで待ち合わせをした。

ξ゚听)ξ「やあ」

 中央通りの噴水前で待っていると、ひらひらのスカートにキャスケットを被ったツンがやってきた。
赤茶けた髪を肩の上で結び、胸の前に垂らしている。薄く化粧もしているようだ。
聖騎士団というのは厳しい選抜テストをくぐり抜けた猛者たちの集まりのはずだが、彼女がそうだとはとても思えない。

ξ゚听)ξ「ダイヴァーはどっちだ?」

( ´_ゝメ)「向こうだ。さっき街の人に訊いたから間違いない」

ξ゚听)ξ「行こう。時間は無い。装備を調えたら今日にでも出発したい」

( ´_ゝメ)「そのつもりだ」

 俺が先導し、クーとツンを連れてダイヴァーへ向かった。
何となく居心地が悪いのは、クーと二人でいる期間が長かったからだろう。

 あ、ごめん。
おまえもずっと一緒だったな。蘭子。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:28:40.91 ID:HzwlrCb/0













#19

*――いちご――*




7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:29:41.99 ID:iCmnLjbi0
今日投下かと見たら来てた
そんな支援

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:30:55.69 ID:HzwlrCb/0

 ダイヴァー通りは旅人の集団で賑わっていた。
雑貨屋、防具屋、武器屋、鍛冶屋から装備品に呪術の組み込みを行ってくれるマギ屋、ハンターの為の買い取り屋など。
種々の店が一同に揃っているので、買い物をするにはこの上無い場所である。

ξ゚听)ξ「勇者。武器と防具は当然買うとして、他に欲しいものはあるか?」

( ´_ゝメ)「金に余裕があるなら色々と揃えたいものがある。登山用の靴や解毒薬。
      応急手当が出来るくらいの医療用具。ロープ。寝袋。あとは」

ξ゚听)ξ「金は結構あると思う。これで好きなだけ買え」

 ウェストリーフから取り出した紐付きの麻袋を手渡された。ずっしりとした重みを感じる
中を開けると、10万G相当の金貨が100枚以上は入っているのが見えた。
金貨が反射している太陽の光より、その価値の高さに目が眩みそうになった。

川;゚ 0゚)「おぉぉ……」

ξ゚听)ξ「足りそうか?」

( ´_ゝメ)「これの十分の一で足りるよ」

ξ゚听)ξ「意外と安いんだな」

 きっとツンは一桁台の数まで交渉してものを買うなんてしたこと無いんだろうな。
しかし値段の相場すら知らないのは世間知らずといっていい。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:33:50.23 ID:HzwlrCb/0

 まさか良家のお嬢様とかいう生い立ちじゃないだろうな。
一般庶民のひがみもあり、一応訊いてみたがどうやらそれは間違いだったようだ。
おさげを揺らしながら軽く否定された。

ξ゚听)ξ「金持ちでは無いさ。家の執事の数もそう多くなかったし、屋敷もあまり大きいものでは無かった」

 訊かない方が良かった。
ツンのことが少し嫌いになってしまった。

 金は全て俺が持ち、買うものも全部任された。
つい昨日出会った男に全財産を預けるあたり、少々危機感の無さを感じるが、金を借りている立場の俺が説教する訳にもいかない。

 大人しく彼女に従い、ベルトに麻袋をくくりつけようとしたときだった。背後から殺気を感じた。
瞬時に右目に力を集中させ、光の力を発動させた。
視界が倍に膨らみ、首を少し動かしただけで真後ろが見えるようになる。

 フードを目深に被った男が、すぐ後ろまで迫っているのが見えた。
顔が見えないので何処を見ているかわからないが、直感で金の入った麻袋を狙っているとわかった。

 男が素早い手つきで麻袋に手を伸ばしてきたので、逆手で手首を取り、力任せに地面に転がした。
手首から手を離さないままねじ上げる。倒れた反動でフードが取れ、顔がわかった。

 『げっ!』


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:35:53.59 ID:FjGxs3XKO
いよっしゃあああああ初遭遇ktkr!!
支援

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:36:33.99 ID:+ImKzi580
支援

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:36:52.76 ID:HzwlrCb/0

 歯並びの悪い口元が悲痛に歪んでいる。
モコロコの災難が、今日も始まるようだ。


*―――*

 『いやあ、流石はダンナだ。二回も同じへまをしたのは初めてでさあ』

 モコロコは開口一番、何でもするから見逃してくれと泣きついてきた。
せっかくなので、今日は観光ガイドとして役立ってもらうことにした。
リサイクルした悪人がもう一度リサイクル出来るなんて、実に地球に優しい男である。

( ´_ゝメ)「質の良い雑貨屋を知ってるか。多少値が張ってもいい」

 『おやすいご用。トランザムの店が近くにあるんで、そこに行きましょう』

 ツンと俺でモコロコを挟むようにして先導させる。
気を抜けば逃げられそうなので、静かに殺気を送りながら街を歩いた。

 『そ、そんなに警戒しなくても……。あれ、この女は昨日の?』

ξ゚听)ξ「私のことか?」

 昨日の騒動を何処まで見ていたかわからないが、ツンの顔は覚えているようだ。
モコロコの肩がぴんと張り、緊張で固くなったのがわかった。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:39:27.00 ID:HzwlrCb/0

( ´_ゝメ)「目的地が同じだから、一緒に行くことにしたんだ」

 『ははあ。昨日の敵は今日の友ってやつですか。
  最後まで見てませんでしたけど、よくあんだけ闘っておいて仲直り出来ましたね』

 今日はもう逃げられそうに無いと悟ったのだろう。
モコロコの体から覇気が無くなった。盗人でなければ同情していたところだ。

 それから約一時間をかけて、道具を買いあさる為にいろいろな店を回った。
トランザムという雑貨屋で買った二つの大きなバックリーフに、買った道具を詰め込んでいった。
身につけられるものはなるべく身につけるようにして、徐々に装備を調えていくと、一段と身が引き締まる思いだった。
今まで金が無かったので適当な装備で旅をしてきたが、こうやって持ち物が充実していくとこれぞ冒険という感じがする。

ξ゚听)ξ「女。おい」

 最後に行くことにしていた鍛冶屋に向かっている途中、黙ってついてきているクーにツンが話しかけた。

川 ゚ -゚)「あぅ?」

ξ゚听)ξ「おまえは魔法使いのようだが、なにか欲しいものは無いのか」

( ´_ゝメ) <なにか欲しいものはあるかってさ>

 手話で通訳すると、クーは少し首をかしげて、それから首を横に振った。
ツンはなにも持っていないクーを怪訝な目で見ている。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:41:58.90 ID:HzwlrCb/0

( ´_ゝメ)「クーは魔法が使えないんだ」

ξ゚听)ξ「魔法使いでないなら、薬師かなにかか?」

( ´_ゝメ)「魔法使いだよ」

 ツンはまだなにか言いたそうにしていたが、「行こう」と彼女の方から歩き出した。
彼女がなにを考えているかわかる。クーも、ツンが言いかけた言葉がなにか、わかってしまったようだ。

 気まずい空気のまま、目的の鍛冶屋に到着した。


*―――*


 少し通りから外れた場所にある、寂れた裏道にその店は構えていた。
他の店に比べて年季が入っているのがわかる。
湿気にやられた木柱に、色のかすれたレンガがいっそう店を寂しくさせていた。

 『コッケイていう親父とその娘が一緒にやってる店なんですがね。
  変わり者の親父で、武器は腕の立つ相手以外には売ってくれないんですよ。まあ、お二人なら大丈夫でしょうけど』

 かすれて読めなくなった看板の横に、小さな木のドアがあった。
今まで店に着いたらモコロコがまず一番に入っていったのだが、この店には入るのを少し渋っているようだ。
腕の立つ相手以外を追い返していたとしたら、ひょっとするとモコロコは以前追い返された客の一人なんじゃないのか。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:44:04.04 ID:Fn2YYKVmO
大好きっす

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:44:12.76 ID:HzwlrCb/0

( ´_ゝメ)「ありがとうモコロコ。案内はここまでで良い」

 『お、そうですかい。なら俺は帰りますぜ』

 よほど入るのが嫌だったらしく、去っていく後ろ姿が少し浮ついていた。
一体どれほど偏屈な人間なんだろうかと、逆に期待してしまう。

 ドアに半分ほど手をかけ、中の様子を覗いた。
人のいる気配がしたので、開いたドアから足を一歩、中に踏み入れた。

 鉄の匂いがたちこめる、薄暗い店内の空気が、頭の上で微かに揺らぐのを感じた。
条件反射に頭を下げると、頭の上でなにかが接近したのがわかった。
かがまなければ間違いなく当たっていた。

ξ;゚听)ξ「トラップだ!」

 ツンが叫んだのと同時に、右目の力を発動させた。
目の端で左脇から飛んでくる丸い物体を捉える。よく見ると、先端に布が被せられた細い丸太だった。

 避けるのは簡単だが、人を試すような真似をされたことが気に入らなかった。
振りかぶった右の拳で、丸太の中心を思い切り突いた。

 縦に避けた丸太はバラバラになって吹き飛んだ。
丸太を吊っていたロープだけが、振り子のように揺れ続けている。
上を見上げると、バネに繋がれた布の塊が、まだ反動を残して動き続けていた。

lw´‐ _‐ノv「あらら。お兄さん強いね」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:44:20.38 ID:TEtBP0Mx0
このタイミングで来たか!
支援

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:46:07.67 ID:HzwlrCb/0

 カウンターの下に隠れていた少女が、顔だけを出して俺に言った。
白に近い金色の髪をした少女は、悪びれた様子も無く薄く微笑んでいた。


*―――*


ξ゚听)ξ「コッケイとやらはどうした?」

lw´‐ _‐ノv「おとんは寝てる。傷がうずくって」

 ツンの問いに、ゆらゆらと頭を揺らしながら少女は答えた。
のんびりとした口調は、彼女のマイペースな性格を表しているようだ。

( ´_ゝメ)「君はコッケイさんの娘だね。名前は?」

lw´‐ _‐ノv「シュール。シューて呼んで」

 シューからコッケイがいない事情を聞いた。どうやら彼は突然やってきた二人組の盗賊に襲われたらしい。
金髪と銀髪の男たちで、かなり腕の立つ者だったらしく、抵抗したコッケイは小さくない手傷を負わされたとか。
傷が癒えるまで店は彼女に任せるつもりらしいが、こんな小さい子に武器屋なんて務まるのだろうか。

lw´‐ _‐ノv「いらっしゃい。古今東西、いろんな武器が揃ってるよ。お兄さんは合格。
       何でも買って良し。茶髪のお姉さんも合格。手にとって武器を眺めるも良し。買うも良し」


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:48:58.51 ID:HzwlrCb/0

ξ゚听)ξ「私も合格で良いのか?」

lw´‐ _‐ノv「いいよ。強いから」

 一目見ただけでツンの強さがわかるというのは凄いことだ。
引き締まった体こそしているが、細身なので見た目で力量を計るのは困難である。
俺でさえ動きを見るまでツンが戦闘の熟練者だということはわからなかった。
評判の武器屋の娘は、いい目を持っている。

lw´‐ _‐ノv「でもそこのあなたは駄目」

川 ゚ -゚)「あぇ?」

lw´‐ _‐ノv「出血大サービス。武器に触る許可は出す。でも買うのは駄目。そもそも扱えないだろうけど」

 元々買う気は無かったから別に良いんだが、少しクーが可哀想だった。

川 ゚ -゚) <なんて言ってるの?>

( ´_ゝメ) <武器に触るときは気を付けてってさ>

 ツンが壁に立てかけられている剣に早速手を伸ばしている。
武器の知識はあまりないが、手に馴染むかどうかは俺でもわかる。
ツンを真似て、並べられている剣を端から手に取っていった。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:50:44.99 ID:Uz170dZ80
支援支援

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:51:18.05 ID:32vO1e370
シューすげぇな

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:51:21.04 ID:HzwlrCb/0

 カットラス、レイピア、ベイダナ、ファルカタ、ファルシオン、フォセ、フラムベルク、
グラディウス、カッツバルゲル、ロングソード、ショートソード。
確かに古今東西の剣が集まっていて、どれも質が高いというのが振っただけでわかった。
しかし今まで短剣しか扱ったことが無かったので、騎士が用いる鎧を想定した剣というのは、どうにも違和感があった。

 手に取るのをやめて、しばらく眺めるだけにしていたが、気になるものは見つからない。
ツンは新しい剣を買うつもりなのか、何度も剣を振り、念入りに感覚を確かめていた。
教科書に載っても良さそうなほど美しい構えで剣を振れるのは、彼女が鍛錬に鍛錬を重ねた結果だ。
俺がツンの真似をしても、効果は半減以下だろう。

lw´‐ _‐ノv「お兄さん、お兄さん」

 いっそ新しい短剣を買って妥協しようかと考えていたところに、シューが声をかけてきた。
彼女の手には、今まで見たことのない剣が握られていた。

lw´‐ _‐ノv「これ、かなり良いよ。扱える人がいないから倉庫に入ったままだったけど、お兄さんならいけるんじゃないかな。
       カタナっていう剣だよ。知ってる?」

( ´_ゝメ)「いや、知らない」

 重そうに抱えている彼女の手から、鞘に入ったままのカタナを受け取った。
鞘は一見シンプルな黒だが、よく見ると細かい装飾がされていて、丁寧な作りになっていた。
柄の部分は木製で、その上に白い布が幾重にも巻かれている。

 鞘から抜かずに両手で握ってみると、そう重くは無いはずなのに、腕全体にのしかかる不思議な圧力を感じた。
片手でカタナを握り、もう片方の手で恐る恐る鞘から引き出す。
鈍く光る細身の鋼が、黒い鞘からぬるりと姿を現したとき、その刃の美しさに息を呑んだ。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:53:54.48 ID:CqzGOXF2O
超支援

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:54:25.89 ID:HzwlrCb/0

lw´‐ _‐ノv「振ってみて。ひゅーんて! 握り方はあえて任せる」

 柄の刃側に近い部分を右手で握り、その下に添えるように左手を握り込んだ。
肩幅くらいに足を開き、刃が腰から伸びる中段の構えで動きを止める。
手首の動きを確認したあと、右足の踏み込みと同時にカタナを真っ直ぐ上げ、足が地面に着くタイミングで斜めに斬り下ろした。

 空気を切り裂いた感覚がした。全身に鳥肌が立つほどの快感だった。
まるで刃と自分の腕が一体になったような連帯感を感じる。
二度、三度、カタナを振る度に、心地良い一体感は増していった。

ξ゚听)ξ「決まりだな」

 剣を選んでいたはずのツンが、いつの間にかこちらを見ていた。
横にいるクーは小さく拍手をしている。

lw´‐ _‐ノv「カタナは職人が作った魂。一振りごとに名前が付けられている。
       それはコテツ。影打(かげうち)で、真打(しんうち)は盗賊が持って行っちゃった。
       でもその子はその子で良い味出してる。大事にしてあげて」

 鞘に収めて、短剣の入ったホルダーの横にくくりつけた。
たった今買ったものなのに、既に長年使っていたような愛着が沸いていた。

lw´‐ _‐ノv「それとお兄さん。これ伝言。というか、うちの商品を買った人には、これ言っておけっておとんが」

 目線を上げて、一言ずつ思い出しながらシューは言った。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:56:58.08 ID:HzwlrCb/0

lw´‐ _‐ノv「『武器は傷つける道具。きれい事で扱ってはいけない。
       覚悟を決めるべし。殺す覚悟。そしてなお生きる覚悟』。以上」

 静かな興奮を抑えられない俺を見透かして、いさめるような言葉だった。
不作法な振る舞いをした自分をしかりつけるような言葉を、まだ幼いシューから言われたことが恥ずかしかった。

 シューの口元がいやらしく緩んでいる。きっと俺の考えていることがわかっているからだろう。
この娘は本当に出来がいい。人を見る目がありすぎる。


*―――*


 荷物で限界まで膨らんだバックリーフを背負って、人気の少ない街道を北に向かって突き進んだ。
後ろを振り返っても、ヴァルガロンの街はもう見えない。
たった一泊しかしていないが、密度の濃い時間を過ごした街が少しだけ恋しかった。

 旅をしていく途中、いくつもの街や村に立ち寄り、そして離れていった。
新しい場所はいつも新鮮な感動に出会えることが出来たし、離れるときはいつも寂しい気分になる。
けれど、これが旅の醍醐味で、これがなければ旅人という存在は生まれることすら無かっただろう。

 出会いがあって別れがあって。
そんな当たり前の出来事を愛おしく思える時間が、人には必要なのだ。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:58:56.18 ID:HzwlrCb/0

川 ゚ -゚)「あぅ!」

 一人だけ身軽な格好のクーが、遠い空の彼方を指さした。
そびえ立つ巨大な山々が、丘のずっと向こう側にたたずんでいるのが見える。

 世界最高峰のダンジョン、パダ山脈。
また新しい出会いが、俺を待っている。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:59:03.31 ID:Uz170dZ80
日本刀ときたか支援

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 20:59:46.38 ID:HzwlrCb/0


#いちご

終わり




29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:00:13.02 ID:JwYr41w70
支援

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:02:18.51 ID:HzwlrCb/0

 モンスターは半夜行性の生き物で、夜はずっと起きているが朝には弱いという傾向がある。
だから今まで山を越えるときは、夜の間ずっと動き続けて、朝になったら寝ていた。

 ところが以前寄った図書館で読んだ書物によると、パダ山脈ではそういった常識が通用しないらしい。
モンスターは種類によって活動時間がそれぞれ異なり、詰まるところ四六時中襲われる危険があるということだ。

 モンスターの脅威に気を尖らせていたが、特に危険なこともなく時間が過ぎ、パダ山脈にて初めての夜が訪れた。
どうせモンスターに行動を合わせる必要が無いなら夜は寝た方が良いと判断したので、
坂になっていない平らな地面にテントを張り、モンスター除けの結界で周りを覆ってから夕食の時間とした。

 火をおこしてたき火にし、倒木を椅子代わりにして三人で囲む。
テントのそばに置いたバックリーフの中から固形食料を取りだし、水を張ったナベに入れて、じっくりと火であぶった。
もう少し腹持ちの良い食べ物が欲しいが、狩りをしていないので他に食べるものは無かった。

ξ゚听)ξ「一つ訊きたいんだが、固形スープが無くなったらなにを食べるんだ?」

 ツンは戦闘の経験こそあるが、旅をするのは初めてだそうだ。
俺とて旅の達人ではないが、旅のいろはくらいなら彼女に教えられる。

( ´_ゝメ)「山には食べられる雑草や木の実がたくさんある。
      皮を剥げば中の繊維が食べられる木もあるし、ヘビやカエルも焼けば美味しい。
      栄養価の高い虫もいい食料に……なるが」

 ツンの顔が見る見るうちに青ざめていく様子がわかった。虫という単語が出たときなど、若干俺と距離を取っている。
ちょっと待て。それは旅の先輩に失礼じゃないか。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:02:19.72 ID:Qh3IHg+CO
面白かった

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:03:41.79 ID:95c7OTfsO
とりあえず乙
もしや連続!?

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:03:41.97 ID:HzwlrCb/0













#20

*――美味しいウサギの食べ方――*




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:04:11.30 ID:JwYr41w70
支援

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:04:56.46 ID:spRP3SNuO
ktkr!!
支援支援!!!

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:06:13.10 ID:HzwlrCb/0

 ノックスはイノシシに似たモンスターで、口から飛び出た巨大な牙が特徴だ。
木々の間を駆けながら、2匹のノックスがこちらに迫ってきた。

 クーを一旦後ろに退かせて、ツンと二人でノックスたちを迎え撃つ。
土を蹴り上げながら突進してくる浅黒い肉の塊を見据えて、カタナを後ろに伸ばした体勢で構えた。

 『コォォォォォ!』

 地面を滑空して跳んでくるノックスに対し、衝突する直前の瞬間に足を踏み出し、真横からカタナで薙いだ。
頭を真っ二つにしたノックスは、緑色の眼球をこぼしながら地面を転がった。
赤い血が地面を黒く染め、びくびくと痙攣する体が断続的なうめき声を上げる。

ξ゚听)ξ「勇者。あそこにほら穴がある」

 ツンの前にも、頭をかち割られたノックスが横たわっていた。
彼女が赤く染まった剣で指し示した先に、地面をえぐったような穴があるのが見える。
寝床にはちょうど良さそうだったし、モンスターの住みかにも見えなかったので、今夜はそこで寝ることにした。


*―――*


 パダ山脈に入ってから一週間が過ぎた。
まだまだ街に近い場所にいるので、モンスターのレベルも高くないが、何しろ数が多い。
たまに強い敵と遭遇したあとは、手当や解毒に時間を取られてしまい、思うように進めないことが多かった。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:07:29.90 ID:Uz170dZ80
ああああうさあああああああああ

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:08:13.42 ID:rV1+NfWK0
しえん

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:08:23.73 ID:HzwlrCb/0

川 ゚ -゚)「あぅ」

 今日の食事当番はクーだ。炒めた雑草とキノコが入ったナベを両手で抱えていた。
たき火の傍には、数羽の鳥を突き刺した木の枝が刺さっている。
これは狩り用の弓矢で捕った今日のメインディッシュなのだが、食べるのは俺とクーだけだ。
ツンは今日も自前の固形食料で済ますらしい。

( ´_ゝメ)「力が出なくなるぞ」

 乾燥させた棒状の固形食料をかじりながら、ツンは鬱陶しそうに顔をそむけた。
お嬢様気質というか、勝手に意固地になる性格のようで、いくら勧めても山の食べ物は口にしない。

川 ゚ -゚) <美味しいのにね>

 クーは鳥の形がそのまま残っている肉を、両手で持って口いっぱいにほおばった。
口の中でごりごりと骨をかみ砕く彼女を見て、ツンが信じられないものを見るような目つきになっていた。

( ´_ゝメ)「食べたいならいいぞ。おまえの分もある」

ξ゚听)ξ「冗談じゃない。騎士がそんなものを口に出来るか」

( ´_ゝメ)「騎士は辞めたんじゃなかったか?」

 皮肉めいた言い方が気に触ったようだ。
「見回りに行ってくる」と言い残して、ツンはたき火のそばから離れていった。


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:10:57.03 ID:HzwlrCb/0

 別に一緒に行動するからといって足並みを合わせる必要は無いが、年の割に子供っぽいと思わざるを得ない。
せっかくだからクーといちゃついておこうと肩に手を伸ばす。だが彼女は今焼き鳥に夢中で俺は眼中に無いらしかった。
二人きりになれたんだからもう少し雰囲気を作って欲しいところだ。

 焼き鳥に手を伸ばした。
焼きすぎで片面が焦げていて、ほろ苦い味がした。


*―――*


 パダ山脈に来てから、今日でとうとう一ヶ月目だ。
最初はきちんと身なりを整えていたが、服は所々ほつれていて、風呂に入っていないので体も臭い。
武器の手入れだけはきちんと行うものの、どうせすぐに汚れる衣服などはほったらかしだった。

 今夜は巨大な木の根元でテントを張り、そこで食事の準備をしていた。
この山での生活も随分と慣れてきて、食料の確保には困らなかった。今夜はヘビのスープにウサギの丸焼きだ。

 クーはとてもウサギが好きである。
農園でウサギを飼っているところがあると、必ず見に行こうとせがまれた。
愛おしそうにウサギを撫でる彼女の姿は、聖典の中の聖女のように見える(言い過ぎかも知れない)。

 その一方、彼女はウサギを食べるのも好きで、食卓にウサギが出るときは普段から笑わない彼女もうっすらと微笑むくらいだ。
この辺りの女心というものがよくわからないものである。

ξ゚听)ξ「食べるのか。そのウサギ」


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:12:25.56 ID:WcAEB5k00
しえn

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:12:50.41 ID:HzwlrCb/0

 岩の上でウサギの死体をさばこうとしたとき、後ろからツンの声が聞こえ手を止めた。

( ´_ゝメ)「ああ。もちろん」

ξ゚听)ξ「そうか……」

 ツンは山の動物を食べるのを嫌うが、殺すことも相当嫌がり、狩りにはいつも一人だけ参加しなかった。
動物は愛でるものであり、食べるものでは無いという言葉を以前彼女から聞いたことがある。
しかし彼女はベジタリアンでは無い。きちんと調理された料理は食べられるらしい。
要は気持ちの持ちようという話だ。これもある種の女心というものかも知れない。

( ´_ゝメ)「いい加減食べろ。そろそろきついだろう」

 山に入ってから固形食料以外のものを口にしていない彼女は、目に見えて弱っていた。
同じものばかりを食べる精神的な辛さもあるだろう。
固形スープが入ったカップを持ちながら、さっきから一口も飲んでいない。

ξ;゚听)ξ「食べなきゃ駄目か?」

( ´_ゝメ)「このまま倒れられたら迷惑だ。足手まといにはなりたくないだろう」

ξ;゚听)ξ「足手まといは私じゃない」

( ´_ゝメ)「クーがそうだと言いたいのか?」

 ツンは口をつぐんだ。
いくら腹が減っていらいらしているといっても、他の者に八つ当たりしてはいけない。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:13:04.57 ID:95c7OTfsO
しえ

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:13:53.05 ID:spRP3SNuO
支援

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:14:32.70 ID:HzwlrCb/0

 彼女がクーのことを不満に思っているのは、一緒に旅を始めたときから感じていた。
彼女にとって、闘えない者は不用なのだ。クーのことをなにも知らない癖に。

 短剣を振ってウサギの頭を切り落とした。
血は見慣れているはずのツンが、眉をひそめて目を逸らしたのがわかった。


*―――*


 ウサギの肉は小さく切り分けて、枝を削って作った串に通して火であぶった。
肉から油がしたたり落ちるのを見ていると、俄然食欲が沸いてくる。

ξ゚听)ξ「おい、女」

 ヘビのスープをすすっていたクーは、ツンが話しかけてきたことに驚き、皿を落としそうになった。
ツンの方からクーに話しかけたのは久しぶりのことだった。

ξ゚听)ξ「どうしてそんなものが食べられるんだ。ヘビはまだしも、ウサギは可愛い。
       私の家でも数羽飼っていたが、もちろん食べることは無かったし、食べようなんて考えたことも無かった。
       ウサギが嫌いなのか?」

 代わりに答えることは簡単だが、クーの言葉を伝えたかったので、俺は通訳に回ることにした。
クーは少し考えてから、手話で話しかけた。

川 ゚ -゚) <ウサギは可愛いから好き。出来れば食べずに可愛がりたい>


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:15:01.48 ID:oSDK2xYeO
応援してるよ支援

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:15:12.93 ID:kSyCqrtHP
>>1
えっ
これ>>1に作品とか書いてあるけど
えっ
凄くつまらないんだけど
作品のつもりだったの?

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:16:30.20 ID:spRP3SNuO
試演

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:16:30.66 ID:HzwlrCb/0

 なるべくクーらしいニュアンスに置き換えて、ツンに言葉を渡す。
ツンは複雑な表情をしながら言った。

ξ゚听)ξ「好きなのに、食べられるのか?」

 ツンの言葉を通訳しようとクーの方に向き直ったが、彼女は真っ直ぐツンを見据えて、さらに続けた。

川 ゚ -゚) <生きるって、そういうことでしょう>

 耳はもう聞こえていないはずなんだが、ツンの問いにちゃんと答えられていた。
クーの言葉を通訳してツンに聞かせると、彼女は小さく目を見開き、それから肩を落とした。

 肉はもう十分焼けていて、美味しそうな匂いがしていた。
木の串を二本取り、一本はクーに、もう一本をツンに差し出した。
ツンは渋い顔をしていたが、俺が戻さないでいると、渋々串を手に取った。

 クーは迷わず肉にかぶりつき、その味に顔をほころばせた。
彼女の様子をじっと見ていたツンは、意を決したように口を開き、肉に噛みついた。

ξ )ξ「う……」

 口に入れた肉をはき出しかけたようだが、ゆっくりと顎を動かし、水筒の水で流し込んでいた。
俺とクーは笑いをこらえながらツンを見ていたが、やがて食べる方に気を取られるようになり、自分の取り分をせっせと消費し始めた。
食べる手が止まったのは、ツンの鼻をすする音が聞こえたときだ。

ξ;凵G)ξ「うううう。くそ」


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:16:41.36 ID:CqzGOXF2O
サバイバー的な支援

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:18:15.65 ID:HzwlrCb/0

 彼女は涙を流しながらウサギの肉を食べていた。
泣くくらい嫌だったとは思っていなくて、笑ってしまったことに罪悪感を覚えた。

( ´_ゝメ)「無理しなくていいぞ」

ξ;凵G)ξ「違う。違うんだ。う、うう」

 嗚咽を漏らしながら、それでも食べる手を休めない。
俺もクーも呆気にとられていた。ツンは鼻声で言った。

ξ;凵G)ξ「ウサギがこんなに美味しかったなんて。泣けてくるんだ。無性に。ううううう」

 もう我慢出来なかった。
肉にかぶりつく彼女の横で、腹を抱えて笑った。
クーも我慢出来なかったようで、のどをひくつかせて笑いに伏せっていた。

 久々に笑ったような気がした。
生きるって、こういうことだよな。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:18:19.30 ID:spRP3SNuO
紫焔

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:18:34.52 ID:WcAEB5k00
しえn

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:19:19.27 ID:HzwlrCb/0


#美味しいウサギの食べ方

終わり



55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:20:00.29 ID:FjGxs3XKO
乙!

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:21:05.38 ID:WcAEB5k00
おつ

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:21:11.65 ID:CqzGOXF2O
乙。
実際ウサギはウマいよ
鴨のが美味いけど

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:21:19.51 ID:95c7OTfsO
しえん

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:21:35.06 ID:oSDK2xYeO
おつー

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:21:41.65 ID:spRP3SNuO
乙です!!

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:22:51.17 ID:95c7OTfsO
おつー
できればもう一話!

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:23:15.45 ID:HzwlrCb/0

 パダ山脈にも人は住んでいる。
外界の者たちとほとんど関わらないので、偏屈者が多いと聞いたことがあるが、その日出会った彼は噂に違わぬ変人だった。

 広大な湖のほとりに建てられた丸太小屋に、彼は一人で住んでいた。
放し飼いにされた牛や羊と暮らす彼は、農作業をするとき以外はずっと家に引きこもり、紙にペンを走らせるという。

( "ゞ)「魔女の村が割と近くにあってね。彼女たちから物々交換で紙を貰っているんだ。
     だから紙が無くなる心配は無いんだよ。問題は時間でね。
     生きている間に解決出来る問題が少ないことが不安なんだ」

 デルタと名乗った中年の男は、元々数学者として寺院などで教授をしていたそうだ。
数学の研究に没頭するあまり、人にものを教える時間が惜しくなり、わざわざ用心棒を雇ってここに引っ越してきたらしい。
甘いホットコーヒーを出してくれた彼は、伸びきった髪とひげを撫でながら、嬉しそうに口元を緩ませた。

( "ゞ)「121時間前にも、二人の人間がここを訪ねてきたよ。
    魔女以外の人と会うのは29784時間ぶりだったから嬉しくてね。丁重にもてなしたよ。
    しかしまた人がやってくるとは驚きだ。パダ山脈の中でも一番危険なルートを選択しなければここには来られないんだが」

( ´_ゝメ)「人に会うのを避ける為にここに住んでいるはずでは無かったのですか?」

( "ゞ)「数学は人生だ。他人との連立が解法への足がかりとなることもある。
    それに気がついたのはここに来てからでね。皮肉なものだよ」

 デルタから今日は泊まっていけと勧められたので、親切に甘えることにした。
最近クーの体調があまり良くなかったし、今日は無理をせずにゆっくりと休むことにしよう。

 開け放った窓から、牛の鳴き声が聞こえてきた。
「3311285回」とデルタがそっと呟いた。


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:24:58.54 ID:HzwlrCb/0













#21

*――インパルス――*




64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:25:11.82 ID:TTRPBqAsO
なんていいひだ!しえん!

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:25:48.36 ID:Fn2YYKVmO
作者はゆず好きと見た

真っ白なミルクに溺れた〜い

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:26:01.27 ID:mPISAtAmO
支援

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:26:04.40 ID:oSDK2xYeO
がんばるね
支援

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:27:01.46 ID:HzwlrCb/0

 寝室のベッドを貸してもらい、そこにクーを寝かした。
呼吸する度にのどが渇いた音を立てている。
額と額を合わせてみたところ、少しばかり熱が出ているのがわかった。

 デルタから貰った風邪薬を飲ませると、疲れがたまっていたのか、クーはすぐに眠りについた。
ハンカチで額の汗をふいてやってから、ツンたちがいる隣の部屋に移動した。

( "ゞ)「様子はどうだい。かなり疲れていたようだけど」

( ´_ゝメ)「とりあえず落ち着いたみたいです。今日休めば、回復すると思います」

( "ゞ)「無理はさせない方が良い。君らほど体は強く無さそうだ」

 あまり女性という観点で見られていないツンだったが、彼女は気にしていないようだった。
ツンはデルタとチェスをしていた。早くも追い詰められていて、腕組みのままチェス盤を睨んでいる。

( "ゞ)「君もやろう。チェス盤は2つあるからね」

 二人を同時に相手するつもりらしい。
ボードゲームには自信があるので、彼を楽しませる意味も込めて本気でやってやろう。

 ツンの向かい側になるように、丸太で作られた椅子に座った。
この位置だと、負けず嫌いな彼女の焦りが手に取るようにわかった。

( "ゞ)「君らは旅人なのかい?」

( ´_ゝメ)「ええ。ヴィラデルフィアに行く途中です」


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:27:32.71 ID:CqzGOXF2O
絶倫支援!!!

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:28:44.72 ID:HzwlrCb/0

( "ゞ)「ヴィラか。航路を使って一度行ったことがある。あそこの大神殿は凄いから、一度見た方が良いよ」

( ´_ゝメ)「はい。そうします」

( "ゞ)「良かったら旅の話を聞かせてくれないか」

 もはや耳に馴染んだその質問をされたのは、デルタのポーンが前に進んだのと同時だった。
ツンはまだ盤上に手を出せずにいる。自軍のポーンをつまみながら、なにから話そうか考え始めた。


*―――*


 夕食の時間になったので、クーを起こす為に寝室へ向かった。
彼女は既に目を覚ましていて、俺と目が合うとのそのそと起き上がり、汗で額に張り付いた前髪をかきあげた。

( ´_ゝメ) <おはよう>

川 ゚ -゚) <おはよう>

( ´_ゝメ) <夕食の時間だ>

 クーは気だるそうにうなだれ、長いため息をついてからベッドから離れた。
見るからに食欲が無さそうだが、食べなければ後々困ることを知っているのだ。


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:29:18.63 ID:spRP3SNuO
うっひょー!
まだまだ支援だぜ!

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:30:36.13 ID:HzwlrCb/0

 クーの手を引きながら居間に戻り、料理の乗った皿が並べられたテーブルに座らせた。
調理済みの野菜と肉、湖の魚がそれぞれバランス良く皿に取り分けられていて、見た目にも豪勢な夕食だ。

ξ゚听)ξ「食べ終わったらまたチェスで勝負したい」

( "ゞ)「いいよ」

 負けん気の強いツンは、9連敗という大敗をしてなお挑むつもりのようだ。
かくいう俺も1勝7敗という自慢できない戦績だったが、もうデルタに挑戦しようなんて考えていなかった。

 今はチェスよりも、この美味しそうな料理を腹一杯食べることに気をかけたい。
嬉しいことに全ての皿がおかわり自由と聞いていたので、遠慮はせずにパンクするくらい食べるつもりだった。
もてなしをされるときは図々しいくらいが丁度いいのだ。旅をしていく過程で学んだことの一つである。

( "ゞ)「デザートにケーキも用意してある。三つしかないが、良かったら食べなよ」

ξ*゚听)ξ「本当か。それは嬉しい。食べるぞ」

 ツンは年甲斐の無い浮かれようでケーキに反応した。
容赦なくモンスターを斬り捨てるときの彼女と比べると、随分と女らしい反応だった。

 デザートまで用意してくれた親切さには頭が上がらないが、あいにく俺もクーも甘いもの(酒を除く)は苦手だった。
ツンにそう言うと、「甘いものが嫌いな女なんてあり得ない」とばっさり言い捨てた。
彼女の価値観はいつも何処かが偏っている気がする。
デルタはケーキを遠慮し、結局ツンはデザートのケーキを全て平らげた。


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:31:54.03 ID:spRP3SNuO
支援

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:32:19.04 ID:HzwlrCb/0


*―――*


 夕食を食べ終わってもクーの調子は戻らなかった。
お湯とタオルを借りて、彼女の体を拭いてやり、それを風呂代わりとした。
さっぱりするとまた眠たくなったようで、彼女はベッドに逆戻りすることとなった。

 寝顔から辛い表情が消えたのを確認してから、ツンたちの元へ向かった。
約束通りデルタはまたツンとチェスをしていたが、今度は小説を読みながら片手間でやっていた。
そのハンディのおかげか、盤上の動きを見るとツンが圧倒的に優勢なのがわかった。

( "ゞ)「それにしても、よくここまで旅をしてきたね」

 デルタは小説をたたみ、棚の上に投げ置いた。

( "ゞ)「君の旅の話はとても面白かった。やはり人間は人間を相手にすることで成長をするものだ」

( ´_ゝメ)「そうだと思います」

( "ゞ)「旅人は皆、人生を表情に刻んでいるが、君の人生は過酷さと慈愛に満ちているように見える」

 過酷だったのは間違っていないが、慈愛というのは言い過ぎな気がして、背中がむずがゆくなった。


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:33:22.83 ID:TTRPBqAsO
支援します!

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:34:03.24 ID:HzwlrCb/0

( "ゞ)「この世界の人間たちは、離散的なパラメータでありながら、その本質に連続的な関連性を持っている。
    全ての人間は互いに影響を及ぼしながら生きているんだ。数学ではなく、哲学の話だが」

( ´_ゝメ)「わかります。俺は旅に出て、新しい人と出会うことで変わっていった」

( "ゞ)「良くも悪くも、出会いは人を変え、人が出会いを形作る。
    話は少し変わるが、私は運命というものを信じていてね。
    といってもベクトルと運動量による未来予知の類だが、全ての事象はあらかじめ推測可能であると考えているんだ」

 デルタが言っているのは、昔なにかの文献で読んだことのある理論だった。
全てを解析する飛び抜けた頭脳を持つ存在がいるというものだ。ある人は神と呼ぶ存在である。

( "ゞ)「世界そのものの動きが全て決まっているとしたら、どれだけ素敵で恐ろしいことだろうね。
    もしも私が世界の先を全て掌握していたら、おそらくそれを変えようとするよ」

( ´_ゝメ)「何故です?」

 デルタのルークが大きく移動したことにより、ツンの顔色が変わった。
先ほどまで優勢を誇っていた表情が、険しく歪み始めた。

( "ゞ)「どれだけ明るい未来だとしても、きっとさらに優れた世界が創造出来ると思ってしまうからだ。
    暗い絶望に満ちた世界であるならなおさらね。いつの時代でも、研究者は“今”を改良したがるものなんだよ」

( ´_ゝメ)「では、もしも自分が満足するような未来だとしたら?」

( "ゞ)「面白い質問だね。あり得ないと切り捨てれば簡単だが」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:35:28.54 ID:mw64wXGXO
うわあああ家着くまで残っててくれえええ
支援!

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:36:04.68 ID:FjGxs3XKO
支援

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:36:36.73 ID:HzwlrCb/0

 ひげを片手でいじりながら、デルタはナイトを動かし、ツンのクイーンを討ち取った。
ツンが小さく悲鳴を上げた。

( "ゞ)「なにを犠牲にしてでも、その未来を維持しようとするよ」

 頭を抱え込んだツンは、テーブルに突っ伏して動かなくなった。


*―――*


 翌朝は快晴に恵まれ、だだっ広い高原と合わせて世界が広がったような気分だった。
クーは夜中に少しうなされていたようだったが、朝には体力も回復していて、表情も戻っていた。
しかし夜通しチェスをしていたツンは、目の下にクマを作り、寝不足に苛ついていた。

 最後の好意として朝食を食べさせてもらい、それから出発とした。
別れの挨拶を交わし、小屋を出て数十メートルほど歩いたときだった。
背中に呼びかけるデルタの声に気がつき、後ろを振り向いた。

( "ゞ)「兄者くん!
    君がなにを抱えているか知らないし、私が聞いて解決するものでは無いだろうから、訊くつもりは無い」

 小屋の前で仁王立ちするデルタは、手を筒代わりに口に当て、離れている俺たちに向かって叫んだ。


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:37:07.47 ID:WcAEB5k00
しえん

今日はいい日

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:38:02.82 ID:spRP3SNuO
紫煙

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:38:18.21 ID:HzwlrCb/0

( "ゞ)「だが忘れないで欲しい。数学は人生で、人生はインパルス関数だ。
    極小時間に無限大の可能性を秘めている。賭けてみる価値は十分にあるんだよ」

 近くで牛が鳴いた。
鳴き声が終わるのと同時に、デルタの口が小さく動いた。


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:39:04.00 ID:HzwlrCb/0


#インパルス

終わり



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:39:29.36 ID:WcAEB5k00
おつー

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:40:42.33 ID:HzwlrCb/0

 捕まえた魚を入れたポットリーフを持って、樹木のアーチが連なる川沿いを歩いていた。
水気を含んだ風が心地よい。
地面にはコケのついた石がごろごろと転がっていて、足を踏み出す度に石と石がぶつかり音を立てた。

 薄暗い森の中で、そよ風が枝をしならせる音と、鳥の鳴く声が時折耳に届く。
人の気配を感じない自然の中にいると、不可侵の聖域に足を踏み入れているような気がして不安になる。
世界中でただ一人になってしまったような孤独感も、言いようのない不安に拍車を掛けていた。

 日が落ちるにつれて狭まってきた視界の先に、青いテントの壁が見えた。
くぼんだ土の壁に押し込まれたように立てられたテントから、俺の気配を感じ取ったのか、ツンが顔だけを出してこちらに目を向けた。

ξ゚听)ξ「遅かったな」

 テントから出てきた彼女にポットリーフを渡した。今日の夕食当番はツンだ。
彼女と入れ替わりでテントに入り、丸まった毛布のそばに腰を下ろした。

 毛布をめくると、虚ろな目をしたクーの顔があった。
表情には生気が無く、手話をする元気も持っていないようだ。俺たちは無言のまましばらく見つめ合った。

 もうそろそろかなと、冷静に考えている自分がいる。
その実、激情に呑まれそうになる瞬間もあった。

 恐怖を覚えた夜があれば、悲しみに伏せった夜もある。
いくつもの不快な感情を乗り越え、ここまでやってきた。
いつか見えてくるだろう終わりに目をそらさず、受け止める覚悟はしていたはずなのに、
胸を締め付けて離さない、後悔という感情が芽生え始めていた。


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:41:07.11 ID:Op51M8dAP
支援

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:41:10.54 ID:mPISAtAmO


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:41:43.51 ID:WcAEB5k00
しえn

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:42:02.54 ID:HzwlrCb/0













#22

*――タンデム――*




90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:42:05.73 ID:mPISAtAmO
な、なんという絶倫…
支援だ!

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:42:10.90 ID:FjGxs3XKO
もう1話だと…
 
もう全力で支援

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:43:45.24 ID:mw64wXGXO
やたっもう一話来た!?
支援!

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:43:55.68 ID:HzwlrCb/0

 好転と悪化を繰り返していたクーの体調は、ここにきて悪化の一路を辿っていた。
夜は毎晩うなされ、呼吸すら出来ないほど苦しそうにするときがあった。
頻繁に熱も出ていて、多めに買っていた風邪薬は既にストックが尽きている。

 夜眠るときは必ず俺かツンが交代で見張りをしているが、見張りの仕事にクーの看病も追加された。
俺とツンには加護の力があり、常人より頑丈でそうそう睡眠不足に陥ることは無い為、体力の心配は無い。
しかしクーが度々不調を訴え、移動に小休止を挟むようになってから、あからさまにツンは不満そうだった。
そんなときに交代制で看病もすることになったものだから、彼女の不満は表情からでも分かるほど露骨なものになっていった。

( ´_ゝメ)「ツン。交代しよう」

ξ゚听)ξ「ああ」

 テントの近くの大岩に腰を下ろし、腕組みをしながらじっと前を見つめていたツンは、目を合わせること無く返事をした。

( ´_ゝメ)「今日はもういい。朝まで眠っていてくれ」

ξ゚听)ξ「そうさせてもらう」

 岩から降り立つと、ツンはさっさとテントに潜り込んでいった。
ツンが座っていた大岩に一足飛びで乗り上げ、あぐらを組んで座った。
これから30分に一回クーの額を冷やすタオルを取り替え、暇つぶしにカタナを研ぎ、
モンスターの気配に神経を尖らせる作業を朝まで行う。

 一人で過ごす長い夜は、考え事をするには十分過ぎる時間があった。
しかし考えても仕方の無いことしか浮かばない今の自分にとって、これほど苦痛なことも無い。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:44:08.85 ID:eCYunUmgO
支援

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:45:40.76 ID:HzwlrCb/0

 袖をまくり上げ、肘のところまで腕を晒した。
モンスターとの戦いでつけられた傷まで覆い、黒の紋様が侵食を広めている。
手首近くにまで伸びてきた紋様のせいで、半袖の服が着られなくなった。

 このまま闇鴉のような体になってしまったら、俺は一体どうなってしまうんだろう。
あの少女のように殺戮を繰り返す存在になるのだろうか。
まともな意識が残っている内に、何とかしなければならない。

 「あ、あぅ」

( ´_ゝメ)「クー?」

川 ゚ -゚)「あぅ」

 獣の意識だけを探っていた為、クーがテントから出ていたことに気がつかなかった。
彼女は俺の座っている大岩によじ上りたいようだ。

 まだ寝ていなければならない体で、無理はして欲しくない。
けれど彼女とゆっくり話が出来る機会が、これから先どのくらいあるだろうかと考えると、
この貴重な時間をむげにしたくないという思いが強くなっていった。

 岩から身を乗り出し、右手を彼女に差し出した。
両手で俺の手首を掴んだ彼女の手を握り返し、落とさないように慎重に引き上げた。
やせ細った彼女はあまりにも軽くて、強く握るだけで崩れてしまいそうなほど脆く感じた。

川 ゚ -゚) <ごめん。話したいことがあって>

( ´_ゝメ) <どうして謝るんだ。座ろう>


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:46:56.86 ID:RmtQUzD/0
支援だ!

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:47:21.86 ID:HzwlrCb/0

 二人で座ると、自然と体を寄せ合い、肩をつける体勢になった。
お互いが少しずつ体重を預けて、しばらく無言のまま時間を過ごした。

 初めてクーと出会ったあの村で、屋根に上って二人で見上げた夜空を思い出した。
あのときの星より、今見えている星の方がずっと輝いている気がする。

川 ゚ -゚) <昔の話。まだ私が子供だったときの話。聞いて欲しいの>

 手話は真横からだと見づらい。
人によって癖もあるので、クー以外の者と手話で話すときは、注意して手の動きを見続けなければならない。
でも彼女の手話は、頭に溶け込むようにすんなりと馴染む。共有した時間の量が違うのだ。

川 ゚ -゚) <私のお父さんとお母さんは、凄い魔法使いだったの。
       二人で旅に出て、いろんな場所を巡っていたから、結構有名だったみたい>

 彼女の口から両親の話が出たは初めてだった。

川 ゚ -゚) <私が生まれてからはずっと村にいたけど、いろんな人がうちに来て、仲間になってくれって誘われてた。
       でも私の為に、二人が旅に出ることは無かった。
       あんまりしつこい人には、雷を落としたり、お尻に火をつけたりしてた>

( ´_ゝメ) <過激な性格だったんだな。おまえによく似てる>

川 ゚ -゚) <うるさい。でもある日、お父さんとお母さんは神官の人に連れられていっちゃったの。
       さらわれたとかじゃなくて、二人とも納得して行ったみたいに見えた。
       やらなくちゃいけない仕事があるって言ってた。遅くならずに、すぐ帰るって>


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:48:43.00 ID:spRP3SNuO
試演

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:49:03.42 ID:HzwlrCb/0

 淡々と話しているように見えたが、表情の裏にある感情が見え隠れしていた。
いらない相づちは挟まずに、次の言葉を待った。

川 ゚ -゚) <二人は帰ってこなかった。代わりに神官の人が来て、二人が死んだってわかった。
       おばあちゃんが凄く怒ってて怖かったよ。神官の人が嘘をついているかどうか調べたりもしてた。
       結局嘘はついていなかったみたい。事故で死んじゃったんだって。
       どういう事故か私は知らないけど、おばあちゃんは知ってるみたい。話してはくれなかった>

 良い印象がない神官連だが、ペニサスさんが事情を知っているなら、本当に仕方の無い事故だった可能性が高いだろう。

川 ゚ -゚) <たくさん泣いたよ。ご飯が食べられなくて、何度も吐いた。夜が怖くて、一人が怖かった。
       眠ったら悪夢ばっかり見た。凄く悲しくて、どうしたらいいかわからなくて。
       木の棒を拾って振り回したり、そこら辺に生えてた木を手当たり次第叩いたり。
       大声でああああって叫んだりもしたよ。跳び回ったり、走り回ったり、地面を蹴ったり殴ったりもした>

 幼い少女が、死の悲しみに錯乱する姿を想像するのは、胸が痛かった。

川 ゚ -゚) <本当に、私は馬鹿で、でもどうすればいいのか、わからなくて。
       子供だったから。何とかなるんじゃないかって思ったの。
       おばあちゃんが隠してた本に書いてあった禁術を使えば、また二人に会えるって。
       またいつも通りの生活に戻れるって考えたの。なにも知らない、馬鹿な子供>

( ´_ゝメ)「……」


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:49:31.92 ID:95c7OTfsO
なんという絶倫
しえん

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:49:45.65 ID:RmtQUzD/0
支援

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:50:12.31 ID:TTRPBqAsO
何話だって支援し続けてみせる

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:51:00.79 ID:HzwlrCb/0

川 ゚ -゚) <夜中にこっそり家を抜け出して、倉庫に入ってた本を盗み出した。
       魔法陣を描いて、呪文を詠唱して。光が見えた。それから先は覚えて無い。
       気がついたらベッドの中だった。私はおばあちゃんに叱られると思って、怖かった。
       でもおばあちゃんは叱らなかった。ごめんねって謝った。村の人も、誰も私を叱らなかった。
       喋れなくなったことよりも、みんなが優しくてくれたことが、一番怖かった>

 手話をする手がどんどん速くなり、いくつもの感情がそこから溢れていた。
クーは一旦話すのをやめて、膝に頭を埋めた。

 久しぶりに長い手話をしたので、少し疲れてしまったようだ。
しばらく休ませると、ぼんやりした顔を上げて、こちらに目をむけた。

川 ゚ -゚) <ツンさんは、私のことが嫌いなんでしょう?>

 どきっとしてすぐに返事が出来なかった。
いまさら誤魔化すことは出来ないし、なによりも意味が無い。
しかし面と向かってはいそうですよと俺から言うのは、ツンにもクーにも悪い気がした。

川 ゚ -゚) <でも私は好き>

 返す言葉を困っていたところに、思いも寄らない言葉が繋がれた。
てっきり彼女はツンを苦手にしていると思っていた。

川 ゚ -゚) <私のこと、たぶんわかってる。禁術のこと、呪いのこと。
       でも同情なんかしないで、ちゃんと一人の人間として見てくれる。君がそうしてくれたみたいに。
       だから好きだよ>


104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:51:42.23 ID:spRP3SNuO
支援

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:52:17.58 ID:WcAEB5k00
シェーン

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:52:39.99 ID:HzwlrCb/0

 昔のクーは、好意的に接してくれる人間以外は見向きもしなかった。
いつも感情的に行動し、人と接することを避けてばかりいた印象すらある。
今では他人を認め、他人の行動を冷静に受け止めることも出来ていた。

 旅をしていく間に、随分とクーは強くなったようだ。
俺は彼女の成長にいまさら気がついたのか。

川 ゚ -゚) <足手まといにならないように頑張るよ>

 今でも十分過ぎるほど頑張っているように感じるが、彼女の意志を否定する訳にもいかず、ただ頷くだけにしておいた。

川 ゚ -゚) <それとね。良い報せか悪い報せかわからないけど。ううん。たぶん良い報せ。
       君が認めてくれれば、きっと良い報せ。あるよ>

( ´_ゝメ) <なんのことだ?>

川 ゚ -゚) <まだちょっと言えない。けどいつか言うよ>

( ´_ゝメ) <わかった。楽しみにしておく>

川 ゚ -゚) <それとね>

 クーは俺の方を向いて座り直した。

川 ゚ -゚) <今までありがとう。私といてくれてありがとう。私を魔法使いだって言ってくれてありがとう。
       君のことが大好きだよ>


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:53:21.42 ID:Op51M8dAP
支援

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:54:03.14 ID:RmtQUzD/0
る、涙腺が……支援

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:54:19.32 ID:TTRPBqAsO
支援

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:54:42.42 ID:HzwlrCb/0

 一つ一つの言葉が紡がれる度に、嵐のような感情が体を駆け巡った。
ありがとうなんて、とんでもない。俺が言うべき言葉だ。
何千、何万回言っても足らないほどの言葉だ。

( ´_ゝメ) <俺を勇者として見てくれたのは、家族以外ではおまえが初めてなんだ>

川 ゚ -゚) <本当に? みんな見る目が無いね>

( ´_ゝメ) <二人でずっと一緒にいよう。ずっと、ずっとだ>

 エセ勇者と罵られようが、クーさえ認めてくれれば俺は勇者でいられる。
クーだって、ちゃんと魔法が使える魔法使いだ。
ペニサスさんが言っていた言葉の意味が、今、ようやくわかった。
俺にかけられた魔法は、あまりにも強力だったという訳だ。

 もう後悔なんて考えない。
行けるところまで、一緒に行こう。


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:55:17.66 ID:mPISAtAmO
泣きそうだ
支援

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:55:37.39 ID:Uz170dZ80
支援以外言えない

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:55:49.35 ID:HzwlrCb/0


#タンデム

終わり



114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:57:13.64 ID:95c7OTfsO
もう一話!

115 : ◆UhBgk6GRAs :2009/06/15(月) 21:57:33.50 ID:HzwlrCb/0
お疲れ様です。今日はこれまでです
20話と21話の間でもたもたしてたのは、デルタの台詞に間違いが無いか再計算してたからです
じらしていた訳ではありません
支援有り難いです。ありがとうございました。次回投下は未定です

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:57:58.30 ID:TTRPBqAsO
お疲れ様でした

117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:58:01.41 ID:RmtQUzD/0
乙!

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:58:02.02 ID:Op51M8dAP


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:58:31.53 ID:FjGxs3XKO
乙。面白かった

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:59:02.71 ID:jpLVpC0xO
乙!

121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:59:06.29 ID:kSyCqrtHP
えっ?作品?

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 21:59:32.11 ID:rV1+NfWK0
おつ

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:00:12.05 ID:oSDK2xYeO
改めて乙

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:00:28.81 ID:spRP3SNuO
改めて、乙!!

125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:00:51.83 ID:DSGB+Vdo0
面白かった。乙!

くそ、泣きそうだ



126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:01:31.38 ID:m4MFsP2A0
乙です!好きだ

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:05:43.55 ID:7szlg9SO0
作品も作者も大好きだ!
乙!

128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:07:20.32 ID:WcAEB5k00
乙でした

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:10:07.31 ID:eqwuYZS5O
乙!!

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:11:11.39 ID:mw64wXGXO
あああ……終わってた……
乙でした!

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:12:08.20 ID:CngOhzpqO
乙!最高だ、涙腺ヤバイ

132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:12:35.94 ID:eCYunUmgO


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:16:57.51 ID:ri0sEXHwO
乙!
初遭遇できて嬉しい!!

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:22:00.04 ID:mPISAtAmO
乙っした

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:29:17.55 ID:nrq8e21FO

楽しみにしてる

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:31:07.44 ID:PsQ35lay0
乙!
切ないな

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:39:20.52 ID:/gkRPurAO

あいかわらず面白いな

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:39:43.83 ID:z4IKytspO
乙!

139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:45:59.09 ID:WIZYYvCY0


140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:47:31.72 ID:HTPFZjTEO
オッツ!

141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 22:56:43.57 ID:pVvscD4GO
お疲れ!

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:14:38.56 ID:x5kfVP/Q0
おつ
クーの二人称って君なんだな

143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:27:17.55 ID:0hTngRZHO
まだ読んでないけど、おつ

144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:38:39.10 ID:qZ6Bi4CXO


最近パラド読む度に
もの申すとのギャップがありすぎて、作者が同じという事実を受け入れられない自分が居る

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:38:44.73 ID:Fe5XTKmIO
>>115
乙!!
初見だがまとめから一気読みしてきたよ
続き期待してる

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:45:50.86 ID:VNJmXXfTO
乙!!
面白くて見入ってしまった。

147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/15(月) 23:58:08.23 ID:aY8nymYHO

次話まで待ち続ける

148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 00:12:35.98 ID:0IoMk7oeO
現行の中で1番好きだ。乙

149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 00:56:57.70 ID:jS/dxFRNO
来てたのか

150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 01:15:27.13 ID:sjWEkkQIO
おつ
クー目が……ああ

151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 01:57:08.87 ID:7z34KeC7O

又々偉業を達成したな
俺はこのことを忘れないぜ

152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 02:49:04.98 ID:FGBWBVeyO
よむほ

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 02:49:45.76 ID:tBlOBzYV0
これ、俺楽しみにしてんだ・・・

154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 03:24:46.42 ID:8PHxK3ksO
きてたああああああ

155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 04:09:01.51 ID:8PHxK3ksO
むほ

156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 06:01:57.31 ID:H042Imxw0


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 08:15:01.83 ID:OxtogBMJO
よむほ

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 08:49:54.14 ID:sHzX80AtO
よむほ

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 09:23:25.67 ID:tEzztmZgO
ウサギとかの話しは正直蛇足だと思う
ジャンプ見てるみたいでいらいらするわ

160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 09:32:16.65 ID:ZWTSrJnY0
>>159
お前は「あらすじ」だけ読んだらいいw

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 10:29:30.26 ID:5JI9kflb0


162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 12:04:35.01 ID:S8AeRo9iO


163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/16(火) 13:33:28.99 ID:CwR0qhqD0
これってキノの旅に似てるよね。なんとなく

61 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)