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子供「苦しいよ……誰か、助けて……」
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:29:53.78 ID:6SKF7edp0
- 子供「誰も……いないの?」
子供「何で、僕はこんな所にいるんだろう……」
子供「誰か……ヒク……グス……」
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:31:04.63 ID:6SKF7edp0
- 泣きじゃくる子供がいるのは深い森。何時から居たのか分からない森。
その周辺には谷や山が連なり、とても開拓された土地には見えなかった。
延々と泣きじゃくる中、子供の耳に遥か遠方より何かの音が届いた。
人がいるのだろうかと泣き止むと、次第に地面についた手から、微かな振動を感じ始めた。
子供「……?」
この子供にはそれが何を意味するかは分からなかった。
だが、次第に大きくなる振動に、本能的に逃げなくてはいけない事だけは理解していた。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:31:57.33 ID:6SKF7edp0
- 子供「ッハア……ッハア!」
子供(何処か……隠れる所……)
子供(大木の穴……大きすぎる……木の上……駄目だ、何かいけない気がする!)
子供(走ってるのに……音が近づい……助けて……)
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:33:11.71 ID:JsBqaMYZO
- 大人「あーコーヒーうめぇ」
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:34:00.56 ID:6SKF7edp0
- 脳裏を過ぎる弱音を振り払う中、巨大な崖の裂け目が小さい双眸に映った。
子供(もう……走れない……ここしかっ)
子供(う……狭……わっ)ドスン
子供(中は……空洞なんだ……っ?!)
何か大きく重たい物が落ちる音が聞こえた。音の正体はもう、すぐそこまで来ているのだ。
子供「っ……! っ……!」
破裂しそうな心臓を押さえ、激しく伸縮を続ける肺に逆らい、呼吸を止めた。
苦しみや恐怖の波に揉まれも、生存本能だけを頼りに
ただの一つの音や身動きを押さえつけ続けたのだった。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:36:04.75 ID:6BoaiewVO
- 肺が…伸縮…?
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:37:00.16 ID:6SKF7edp0
- 子供「……っは!」
勢いよく飛び上がり辺りを見渡した。
岩の裂け目に飛び込んだ先の洞窟は、今や静寂そのものだった。
子供「……」
あのまま気絶していたのか、恐ろしい足音はもう聞こえなかった。
子供「……助かった?」
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:38:41.76 ID:T8K9Kb/C0
- しえ
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:41:00.66 ID:6SKF7edp0
- 子供「……」
子供「これからどうしよう……お腹空いたけど……外出たくないよ」
子供「……」
子供「でもこのままじゃ……少しだけ……少しだけ出てみよう」
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:43:00.06 ID:6SKF7edp0
- 子供はその後、何日も外に出ては周囲の探索を続けた。
日々得られるのは大きくても拳大程度の果実は数個。
そして巨大な足音に追われては、洞窟に逃げ込んでいた。
子供「……っ」
足音の正体はなんという事はなかった。爬虫類の様な鱗を纏った足。
巨大な怪獣でしかなかった。
子供(……追いつかれたら)ガクガク
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:45:00.05 ID:6SKF7edp0
- 子供「……」
初めは恐怖するも、次第に好奇心に満たされた冒険と変わり、それから数週間が経った。
例えどんなに探索に慣れ様とも、天敵に対する術が洞窟に逃げ込むだけの彼には、
行動範囲も限られ、徐々に採れる食料も少なくなっていった。
子供「どうしたら……いいんだろう」
手足に力が入らない。それに外は雨が降っている。とても食料を探しに行けない。
仮に行けたとして、今の状態では天敵を気づけるのだろうか。逃げ切れるのだろうか。
子供「……誰か……グス……誰かぁ」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:46:53.29 ID:6BoaiewVO
- 冒険が好奇心で満たされたのか?子供の名前は冒険なのか?
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:48:30.77 ID:6SKF7edp0
- 子供「……」
自分の手にまとわりつく鼠を見つめていた。自分より小さい生き物を初めて見た。
このままではそう長くない事に気づいているのか、鼠は警戒心を震わす事は無かった。
子供「……」
手の平に乗った鼠をそっと、優しく掴んだ。
子供「……」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:50:08.95 ID:6BoaiewVO
- 警戒心を震わすってなに?
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:52:30.32 ID:6SKF7edp0
- 僅かに残った力で上半身を起こし、腕を胸元まで引き寄せた。
子供「ごめんね……ごめんね……っぐ!」
子供は意を決して、震える口を大きく開いた。
やっと危険な事に気づいた鼠は、今更ながら手の中で暴れだした。
子供「……っ!……っ!」
胃液が逆流しそうになる。だが、それでも子供は耐えて、ひたすら貪りついた。
必死に生きようと暴れていたが、今は動かないその身体を何度も何度でも。
子供(嫌だ……こんなの嫌だ……嫌だ……)
子供(……死にたくないんだ)
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:55:10.39 ID:6SKF7edp0
- 子供「……」
大型爬虫類「……」
子供「……」
大型爬虫類「……?」
子供「……」ギリ
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 20:58:00.69 ID:6SKF7edp0
- 子供「……」グチャグチャ
子供「……」クッチャクッチャ
子供「……はあ……はあ」
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:01:00.26 ID:6SKF7edp0
- ……
子供「……」ガリ ガリ
子供「……よし」
その子供にしては大きすぎるくらいの木の槍。
石で先端を尖らせただけの簡素な物だった。
子供「狩るんだ……他の生き物を食べなくちゃ……生き残れない」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:03:01.41 ID:6BoaiewVO
- 鼠に噛まれると頭痛発熱吐気下痢で数日動けなくなるんだよね
それを食べるとか
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:05:10.79 ID:6SKF7edp0
- 子供は泣きじゃくる事が無くなった。生き残る術を必死に模索する日々だった。
狩る為の道具、逃げる為の罠。
あの雨の日までの生活が嘘のように、行動範囲は広がっていった。
そして今は、根城となる洞窟の探索に明け暮れていた。
子供「ここの壁……やっぱり誰かが作ったんだ」
洞窟の奥の壁に石を打ち付けると、ボロボロと崩れて人一人が通れる道が出てきた。
子供「奥に何が……?」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:08:00.85 ID:6SKF7edp0
- 洞窟の奥には、小さな部屋があった。本棚があり、日記や図鑑、何かの研究記録のような本もあった。
幼い子供にとっては宝物の数々だった。生きる為の術が凝縮された場所だった。
子供「凄い……ここにある本を読めばもっと……」
子供「この本は……日記かな?」
内容は……難しい言葉ばかりで、殆ど読み取る事は出来なかった。
だが、ここには人がいた。その事実が、残り香のような温もりがこの部屋にはあった。
子供「……」
本を抱き締め、子供は久しく涙を流した。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:11:00.20 ID:6SKF7edp0
- ……
少年「あんの怪獣……人の獲物を盗るなんて……くそ!」
少年「……僕が捕らえるのを待ち構えているんだよなぁ」
少年「かといって、狩りをしない訳にはいかないし……あれはまだまだ倒せそうにないし」
少年「……」
少年「谷だ……あいつは谷には来なかった。向こうで狩りをしよう」
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:14:19.01 ID:6SKF7edp0
- 少年「意外と……きついな……」
少年「これじゃ今日は……野宿になっちゃうな。狩りは明日にするか……」
「……なんだ、空耳かな?」
少年「……?!」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:16:15.34 ID:6SKF7edp0
- 「ここいらは誰も来ないと思ったけど……」
顔と上半身は人の姿だが、肩からは翼が生えており、下半身に至っては鳥の姿だった。
少年(うわっ、凄い、人じゃないけど、凄い、喋ってる!)
考えるよりも先に行動に出ていた。
少年は岩陰から飛び出した。
「……?!」
少年「凄い、魔族……? 言葉が通じる人がいる!」
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:18:00.27 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「こんな子供が下で生きていたなんてねぇ」
ハルピュイア「さぞ大変だったろうに……よしよし」
少年「えへへ、ありがとう。でも今は大丈夫。最近、怪獣がうざったいけど」
ハルピュイア「あの大きな爬虫類かい……?よく食われずに済んでるもんだ」
少年「今は獲物を横取られる。あいつ、僕を餌を捕る道具にしてやがるんだ」
ハルピュイア「なるほどねぇ……そうだ、ちょくちょくこっちに遊びにきなよ」
ハルピュイア「あんのオオトカゲを騙くらかす相談や、入れ知恵してやるよ」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:19:25.91 ID:cONJUFxk0
- 魔族とやらは自己紹介も無しに名前判明すんのか…
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:20:15.71 ID:6SKF7edp0
- 怪獣「グルルル……」
数メートルもある巨体を揺らし、獲物を追いかける。
横取れないよう知恵をつけた生き物など、食ってしまえば良いのだ。
怪獣「グルル……?」
辿り着いた先は、壁に囲まれた谷底の行き止まり。
罠だろうか、と周囲を警戒し、ゆっくりと後退を始める。
その時、周囲の崖から岩石がいくつも降り注ぐ。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:21:14.65 ID:6BoaiewVO
- 肩から羽が生えてたら上半身が人って言うないだろ
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:24:00.11 ID:6SKF7edp0
- 怪獣「グウウウ……ガァ!」
突如走る痛みに、怪獣は周囲を見渡しすと、
大きな尾を担いで逃げ出す人の姿があった。
いよいよ食ってやろうと待ち伏せていたのは彼も同じ。
降り注ぐ岩に行く手をを阻まれ、
追う事も出来ず、怪獣は見事に完敗したのだった。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:26:00.05 ID:6SKF7edp0
- 少年「いやぁ、成功するのかと不安だったけど、あいつの尻尾捕ってきたよ」
ハルピュイア「坊やが岩に潰されるんじゃないか、と少し不安だったけど無事でよかったよ」
少年「うん、大丈夫だった! 美味しいか分からないけど……一緒に食べる?」
ハルピュイア「気の利く坊やだね……それじゃあ君の獲物、ご相伴させてもらうわ」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:28:59.97 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「それでは、少年の初の大物に乾杯っ♪」
少年「か、乾杯っ?」
ハルピュイア「祝ったりする時は、こうやって飲み物が入っている容器を鳴らすのさ」
ハルピュイア「まあ……あたし達にはコップを持つなんて芸はできないけどね」
少年「ふ〜ん……じゃあ、改めて乾杯っ!」
ハルピュイア「ふふ、乾杯っ! それにしても、少年は見た事無い魔族だけども、なんの種族だい?」
少年「んー……自分がどうしてここにいるのかも分からないんだよね」
ハルピュイア「記憶喪失? まあ、どちらにせよ、魔族としての力を引き出せるように、特訓はしておいた方がいいかもね」
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:33:30.77 ID:6SKF7edp0
- ……
少年「これが俺の本当の姿かぁ……」
少年は二対の角と一対の羽を生やしていた。
少年「う〜ん……何度見てもかっこいい!」
ハルピュイア「はいはい、今日も飛行訓練するよ」
少年「ね、ねえ、場所は湖に戻さない?」
ハルピュイア「それじゃ何時までも上達しないでしょ」
ハルピュイア「さ、地面に叩きつけられないようにしっかり飛ぶ!」
少年「うう、くっそ〜……あわ、わわわわわ」グラグラ
ハルピュイア「姿は立派なんだけどなぁ」
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:38:00.07 ID:6SKF7edp0
- 少年「見て見て〜! もう墜落なんてしないよ!」
ハルピュイア「はい、そこで右に旋回」
少年「そんなのらっくしょ、っ木ぃ!」
ハルピュイア「まだまだねぇ……」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:40:45.57 ID:6SKF7edp0
- 少年「酷いや……分かっててあんな指示するんだもの」ブツブツ
ハルピュイア「いーい? 過信や自惚れは自分を殺すわよ」
ハルピュイア「坊やが何時もの様に走るのとは違うの」
ハルピュイア「例え旋回ができるようになっても、咄嗟の判断で障害物を避けられるレベルじゃない」
ハルピュイア「まだまだ雛が飛ぶ事を覚えたに過ぎないの。分かったわね?」
少年「……はーい」
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:44:10.29 ID:6SKF7edp0
- 少年「川魚捕れたよー」
ハルピュイア「わざわざそれ持ってきたの?」
少年「そうだけど? ほら、火を起こすからちょっと待ってて」
ハルピュイア「いやここは、燃えるから外でやってね」
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:46:40.10 ID:6SKF7edp0
- 少年「今日は野菜を持ってきたよー」
ハルピュイア「うっわぁ、自生している所でも見つけたの?」
少年「うん。あと、洞窟にあった本のマネで育ててみたら上手くいったんだ」
ハルピュイア「こんな島で農耕が行われるとは……」
少年「今まで肉と果実とか野草ばっかりだったから、毎日がすっごい楽しみだよ」
少年「それにね、薄い岩を見つけたんだ。時間は掛かるけども”炒める”って調理法ができるようになったんだ!」
ハルピュイア「この子は何処に向かうんだろうねぇ……」
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:48:40.44 ID:6SKF7edp0
- 少年「今日は何が獲れるかなぁ」
少年「鳥……よーし」
ハルピュイア『どうかしたかい、坊や?』
少年「……」
少年「蛇でも探すか……」
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:50:30.40 ID:6SKF7edp0
- 少年「やっほーい」
ハルピュイア「やっほーう」
少年「草食動物の肉で燻製してみたよ〜」
ハルピュイア「こんな島なのに、とんでもない料理スキルを」
少年「何だかんだで、もう何年も住んでるからねぇ」
ハルピュイア「……」
少年「どうかした?」
ハルピュイア「結構経ったんだなぁって思ってね」
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:52:35.37 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「ねえ、坊や。ここでの生活は好き?」
少年「うん、お姉ちゃんもいてくれるし、大好き!」
ハルピュイア「……」
少年「……?」
ハルピュイア「あたしは時々思うんだ。君はその翼で、もっと遠くに飛び立つべきだって」
ハルピュイア「この島の外には大陸がある。そこでもっと多くの事を学び成長すべきなんじゃないかって」
少年「外の世界……」
ハルピュイア「本当に良い事かは分からないけど。もし気が向いたら言って。外の事を教えてあげるから」
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 21:53:59.97 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「大陸には幾つもの国があって、そこの長を魔王って呼ぶの」
ハルピュイア「ああ、国っていうのは、魔族や魔物が集団で生活している所ね」
ハルピュイア「いっぱい人がいれば、その分いざこざが起こるから、それを仕切る人が必要なのよ」
少年「何だか外の世界って面倒だなぁ……」
ハルピュイア「でも、そうやって他人と協力して生きるのも楽しいのよ」
ハルピュイア(基本、独力で生きているこの子には難しかったかなぁ)
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:01:10.30 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「いくつも国がある中で、敵対しているグループがあるの」
少年「協力して生きるんじゃないのー?」
ハルピュイア「あー説明が面倒だけども、考え方の違いがあるのよ」
ハルピュイア「特に南西の方はあんまりいい噂がないから行かない方がいいわよ?」
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:02:35.50 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「今まで教えてきたのは、北の大陸。今日は南の大陸についてね」
ハルピュイア「と言っても、あまり詳しい事は知らないんだけどね」
ハルピュイア「南は人間って種族がいるらしいんだけども、向こうには近寄っちゃいけない決まりなの」
少年「何でー?」
ハルピュイア「各国の取り決めとしか知らないんだよねぇ」
少年「ふーん……とりあえず南の大陸はどうでもいい、と」
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:02:56.87 ID:+n6/VAFPO
- なあ、ドランって知ってる?
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:06:29.94 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「今日は北の大陸の細かけど大切なお話よ」
ハルピュイア「基本、国ではお金と言う物を渡すと、食べ物や道具が貰えるの」
少年「……?! まさか狩りとかしちゃ、駄目なの?」
ハルピュイア「禁止されているわけじゃないから安心して。ただ、誰かの動物である可能性もあるから気をつけてね」
少年「んー……お金ってどうすれば貰えるの? 食べ物とか渡すのかな?」
ハルピュイア「坊やなら、動物の皮とか見つけた薬草を煎じた物を持っていけばいい、かな?」
少年「……微妙にアバウトー」
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:09:40.35 ID:6SKF7edp0
- 少年「……」
ハルピュイア「待ちに待った旅立つ前日になんて顔してんのよ」
少年「だって……ここを離れたら、お姉ちゃんには会えなくなるんだもの」
ハルピュイア「外の世界にはね。多くの人がいるの。こことは違った苦労がたくさんあるわ」
ハルピュイア「辛くなったらここへお戻り。あたし達の種族の寿命は長い方なんだから、ね」
少年「うん……何時か、帰ってくるよ」
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:11:50.10 ID:6SKF7edp0
- ハルピュイア「旅路に出る前に最後に二つ伝えておくわ」
ハルピュイア「必ず生き残る事。これは分かっているね?」
少年「うん、負ければ咀嚼されるもんね」
ハルピュイア「外の世界はそこまでは……まあいいや、二つ目は普段は角と翼を隠しなさい」
ハルピュイア「その姿でいる時、どうも魔力がだだ漏れな気がするのよ」
ハルピュイア「いきなり暴発しないとは言い切れないし、周りに影響を与えかねないからね」
少年「どんな時なら元の姿になっていいの?」
ハルピュイア「必要な時になったらね。普通の姿じゃどうにもならない、とか」
少年「空飛びたい時ぐらいしかない気がするけど……分かったよ」
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:14:00.30 ID:6SKF7edp0
- 少年「それじゃあ俺、行くね」
ハルピュイア「ええ、行ってらっしゃい。たかが一年、二年で帰ってこないよーに」
少年「……後ろ髪引かれる思いなのに、そういう事言うの?」
ハルピュイア「湿っぽいのは嫌いだよぉ。さあ行った行った。大陸までは長いんだから落ちないでね」
少年「……おまけに酷い言われよう。もう墜落なんてしてないのに」
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:14:45.14 ID:6SKF7edp0
- 黒く、鴉のような翼を広げ、一人の少年は羽ばたいた。未だ見ぬ世界の扉をくぐる為。
小さな身体には似合わない、巨大な翼の雄雄しい羽ばたきを見ると、何処までも飛んで行ってしまえそうに思える。
ハルピュイア「ふふ……空の果てまで飛んで行きそうね」
ハルピュイア「土産話、待ってるからね……」
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:26:40.65 ID:AYZN1JwgO
- なかなか面白い
支援です
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:30:13.59 ID:QDWdXmTgO
- ふむ
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:36:10.34 ID:6SKF7edp0
- 少年「……」
少年「……」
少年「……っは!」ガバ
少年「……?!……?!」キョロキョロ
少年「は、浜辺か……?」
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:38:40.33 ID:6SKF7edp0
- 少年「遠すぎだ……疲れた」
少年「……」
少年「ここが大陸かぁ……」
少年「……」
少年「獲物がいない……」
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:40:14.89 ID:6SKF7edp0
- 少年「ここらの海の魚って不味いものなのかなぁ」
少年「草食動物を狙えばよかったか……」
少年「……よし、夜も明けたんだ。ここからは歩いて行こう」
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:42:55.16 ID:6SKF7edp0
- ……
少年「おぉぉぉぉ〜〜」
決して大きくは無い街ではあるものの、溢れる活気に目を輝かしてははしゃいでいただ。
少年「凄い、皆言葉を喋ってる……これが国なんだぁ」
少年「うん? 町だっけ、村だっけ? ……まあいっか」
少年「おっと、まずは道具屋で要らない物を売らないと……」
少年「……」
少年「いっつも食っていた奴の骨なんか、何の役に立つんだろうと思ったけど……」
少年「……金貨って綺麗だなぁ」
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:48:40.85 ID:6SKF7edp0
- 男「おう坊や、旅人か?」
少年「そうだけど?」
男「さっきからキョロキョロしていたからな、案内してやるぜ」
少年「本当?! ありがとー!」
男「へっへっへ、痛い目を見たくなかったら、その金を置いていくんだな」
少年(狭い通路に行き止まり、そうか、これが大陸流の狩りかっ!)
男「おい、聞いて……」
男「ヒィィィィィ!!」 [>escape
少年「っち! 仕留め損なった!」
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:50:42.16 ID:QDWdXmTgO
- 盗人より猛々しいとは
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:50:50.32 ID:6SKF7edp0
- 少年「うっわ、凄いや、この防具軽いや」
武具屋(う〜ん、何て原始的な鎧を着ていたんだろう、この子)
少年「おまけに凄い切れ味だよ、この剣!」
武具屋(鉄を叩いて作っただけの剣とか何時の時代だろう……)
少年「おじさんありがとー! 古いの引き取ってもらった上にお代までいいなんて、何か申し訳ないなぁ」
武具屋「なぁに、子供が気にする事じゃないさ」
武具屋(実用していたわけだし、これはこれでいいコレクション!)
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:56:19.77 ID:6SKF7edp0
- 宿屋
少年「っへへ、武具屋さんに地図まで貰っちゃった〜」
少年「ここの食事美味しかったなぁ。パンとかどうやって作るんだろう……」
少年「さぁて、明日から何処へ向かうかな」
少年「でも、何処がどんな国か分からないんだよねぇ」
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 22:58:09.07 ID:6SKF7edp0
- 現在少年は北西に位置する国の領域にいる。国境には警備や関所は無く、
目的地を望めば、何処にでも自由にいけるのだ。各国の情勢、治安はあれど。
少年「もっと南に進もうかな……でも、北や東の方が国の数は多いなぁ」
少年「あれ、南西の国って……まあいいか」
少年「どっかの国で、しっかりこの大陸の事と常識を学んでから、色んな所に行こうかな……」
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:01:11.55 ID:6SKF7edp0
- ……
少年「ふぅ……そろそろ昼食にしよっと」
少年「パ、パンから毛が……いやいや、カビてるだけか」
少年「保存食とはしてはいまいちの性能だなぁ……やっぱ狩って燻製にした方が良いなぁ」
少年「まずい……パンが全滅しているとなると、結構心許ないな」
怪鳥「ギャァーー」
少年「……パン、食べるか?」
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:04:34.88 ID:6SKF7edp0
- 少年「保存食も調達したし、そろそろ行くかな」
少年「国境を越えているんだから、町や村があってもいい頃だとは思うけども……」
少年「廃村ばかりなんだよなぁ」
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:06:45.50 ID:6SKF7edp0
- 少年「ふぅ〜久々に水浴びができて良かったぁ。あ、お風呂って言うんだったか」
宿主「君、旅をしているのかい? まさかこの国の首都に行くつもりじゃあないよね?」
少年「そうですけども……何か問題があるんでしょうか?」
宿主「まだ国の外れだからいいけども、ここは治安が悪い所なんだよ」
少年「俺は強いから大丈夫ですよ」
宿主「……う〜ん」
少年「あ、ご馳走様でした。晩御飯、凄く美味しかったです」
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:09:56.20 ID:QDWdXmTgO
- ふむ
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:11:49.97 ID:6SKF7edp0
- ……
少年「何だ……この村」
村に着くより前から漂う臭気。少年には嗅ぎなれた臭いだった。
独特の鉄臭さ。だが、この大陸でこれほどの臭気が放たれる必要があるのだろうか。
辿り着いたそこは、肉食の生き物達の餌場と化していた。
少年「ここで一体何が……」
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:13:00.26 ID:6SKF7edp0
- どの家も荒れ果て、金品は無くなっている。
少年「これが賊の仕業なのか……?」
少年「大陸じゃあ、こんな事をしなければ生きられないのか……?」
少年「……」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:17:05.10 ID:6SKF7edp0
- 「誰か! 助け……」
「うるせえ! おとなしくしろ!」
「ひぃ! いやぁ……誰かぁ……」
所々伐採跡が見える林の中、人の声を聞く。実に数週間ぶりに聞いた気がした。
少年「……」
女「た、助けて……お願い……」
男A「何だぁ、このガキ。殺されたくなかったら、とっとと行っちまえ」
男B「そうだ、俺達は忙しいから見逃してやる。ありがたく思うんだな」
少年「……」
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:20:45.31 ID:6SKF7edp0
- 少年「……その人をどうこうしないと、貴方達は生きていけない程、苦しい生活なのですか?」
男A「……はあ?」
少年「その人を手にかけないと、貴方方は生き残れないのか?」
男A「ばぁーか、んな訳あるかよ。こいつとは遊んでやるんだよ」
女「い、いや……」
男B「あー? まっさか小僧もやりたいのか?」
少年「……」
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:24:13.41 ID:6SKF7edp0
- 何時から振り出したのだろうか。地雨が身体を濡らしていき、足元の赤い池が広がっていく。
少年「……」チラ
女「ひぃ、い、いやっ!」
全身を真赤に染めた少年に臆し、女性は震える手足でその場から逃げ出した。
少年「……」
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:25:29.78 ID:6SKF7edp0
- 濡れた服を乾かそうともせず、少年は男達が来たであろう方向に進んでいく。
辿り着いた村では、略奪と殺戮、陵辱の限りが尽くされている最中だった。
少年(……何だこの感じは。凄く気分が悪い)
少年(何故殺せる……? こいつらは、何を楽しそうにやっている?)
少年(生存本能が叫んでいるわけでもない……何故、私欲の為に命を奪える)
少年(……歪んでいる。あいつらは……歪みきっている)
音も無く剣を引き抜くと、少年は村に向かってゆっくり歩いていった。
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:27:30.29 ID:6SKF7edp0
- 地雨の中、立っているのは少年一人。
切り捨てられた村人、切り伏せた賊、数多くの遺体が散らばっていた。
少年(歪んでいたのは……この世界そのものか)
少年(歪んでいる……お前らも俺も……俺らを内包するこの世界も歪みきっている)
世界から隔離されたあの孤島いられたら、どんなに幸せだったのだろうか。
少年は歪んだ自分の姿を、波紋広がる水面から見つめていた。
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:28:32.44 ID:6SKF7edp0
- ……
「聞いたか、また賊狩りが出たらしいぞ……」
「こんな国に無駄な事をする奴がいるもんだな」
「全員一太刀で両断されていたらしい……とんでもない化け物だ」
濁った様な瞳で、一人の青年が氷を浮かべる琥珀色の液体を胃に流し込んだ。
喉を焼き付けるこの感覚が堪らない。
全てを飲み干すと、カウンターに金貨を置いて席を立った。
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:28:41.47 ID:QDWdXmTgO
- ちなまぐさい
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:30:32.03 ID:6SKF7edp0
- 「……見ろよ、あいつのどす黒い靴、鉄くせぇ」
「言うな、俺は知ってるぞ、あいつが賊狩りだ。一人でどんな大勢にでも突っ込んでいくんだ」
「……狂ってやがる、ただの殺人狂か狂戦士じゃねぇか」
口々に囁く集団に立ち止まって一瞥する。
集団はびくりと身を震わせるのを見て、青年は鼻で笑うと酒場を出た。
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:33:14.74 ID:6SKF7edp0
- 鉛色の空は、今にも雪を吐き出しそうな中、青年は上着をはためかせている。
青年(俺は……何をしているんだろうか)
青年は長い年月を南西の国々で過ごした。
これ以上、別の歪みを見る気になれずにいたのだ。
青年(今の姿を見たらどう思うだろうか)
たった一人の、自分をよく知る人物を思い出す。今も彼女はあそこにいるのだろうか。
あそこに帰るべきなのだろうか。
青年(こんな俺を受け入れてくれる場所などあるまい……)
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:34:30.08 ID:6SKF7edp0
- 青年(……他の国々を回るべきなのだろうか)
青年(……今の自分に清い部分もあるまい。どんな汚れた事であっても驚きはしないだろう)
酒場で言われた言葉を思い出す。自分がいかに落ちる所まで落ちているのかを思い知る。
青年(結局俺の我侭だ。認めたくないという私欲の為だけに、命を奪い続けている)
青年(満たされる事の無いエゴだ。満たされないなら……奴らよりも質が悪いのだろう)
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:36:29.82 ID:6SKF7edp0
- ……
酒場を兼ねた宿屋で、青年はいつもの様に、琥珀色の酒を煽っている。
ただ静かに流れるこの時間だけが唯一の安息だった。
宿主「なあ、お兄さん……旅人だろ? 何で、こんな国にきちまったんだ」
青年「……この国はそんなに酷いのか? 他所よりよっぽど治安がいいように見える」
宿主「そ、そりゃあいいさ……魔王様が領地を守ってくださっているんだ」
宿主「だ、だからな、魔王様の寛大なお心に触れる前に、早く出国した方がいい」
客「ああ、そうだ。あんたは土地に縛られない渡り鳥だ。早くしないと、鳥もちに絡め捕られるぞ」
青年「……そ、そうか? 分かった」
- 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:37:50.03 ID:6SKF7edp0
- その後しばらくの間、青年はその国に留まり、様子を見続けていた。
この国の魔王は圧制をひいていた。
武力によるもので、好き放題にやっている様子であった。
青年(武力により、その地位を認められる国の体制の所為でもあるだろうがな……)
魔王は狂戦士であった。ただただ戦い、異を唱える者を切り捨てる。
圧倒的な力で平伏せているのだ。
青年(側近達が政治を何とかきりもみしているのか。いっそ、魔王を無しにした方がうまくいきそうな国だな)
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:39:39.87 ID:6SKF7edp0
- 自分の歪みを止めたかった。それが自身を止める事であっても。
恐らく、この国の魔王に言葉は要らない。拳や剣で会話する部類だろう。
青年(魔王と立ち会ってみるか……全力で)
国を守るべき魔王が、民に手をかけているその事実。
青年の中の歪みが更に増していくのを感じていた。
あの雨の日から、癒える事の無い不快感が全身を支配していく。
青年(……何だろうな、いつも雨の日がターニングポイントな気がする)
- 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:40:44.74 ID:6SKF7edp0
- 島を出てからは一度も、元の姿に戻る事は無かった。
焼けるような痛みと共に、額と耳の後ろから生えただした角と背中の黒い大きな翼を、
いと愛しむように撫でまわした。
懐かしい香りがした。あの日の島の香りを。自分の角と翼だけはあの頃のままだった。
青年(それも今日までだ)
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:42:59.84 ID:6SKF7edp0
- 「と、止まれー! くそ、侵入……」
「何としてでも止めろ! 賊を魔王様の下には……」
怒りで我を忘れた時、青年は自分の魔力で剣を生成する術を手に入れていた。
望めば、周囲を焦土と化す破壊の剣。
青年(壊す為だけの剣を振るっているのだ……善良であるかもしれない兵士達に)
歪みが増し、胃の中の物を全て吐き出しそうになる。懐かしい感覚に、口元が綻ぶ。
やはり、自分はあの島を出るべきではなかったのだ。
なけなしの良心が口を割る。
青年「命惜しい者は引け! 引かぬなら断ち切る!」
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:44:35.41 ID:6SKF7edp0
- 兵士達では青年を抑える事などできず、気づけば追いかけてくる兵士すらいなかった。
青年(ここからが魔王の領域か……)
長い通路を抜けた先、装飾の無くなった通路や扉、息苦しい威圧感に、ここが何処なのか理解した。
青年(さあ、見せてくれ。俺を止める、飲み込む歪みを……)
- 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:45:59.92 ID:6SKF7edp0
- 魔王「……小僧、何をしに来た」
玉座に座っている影が立ち上がった。大岩のような巨体はまるで、威厳の象徴のようだった。
青年「話をしに参りました」
冷静な素振りで剣を構えなおした。
本当は違う、かつて無いほどの胸の高鳴りと興奮を覚えている。
ああ、自分はやはり狂っているのだ。流暢にそんな事を考えた。
魔王「いいだろう、何をして会話となるかも知っているようだな。ならば、語り合おうではないか」
- 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:47:45.00 ID:6SKF7edp0
- 青年(この剣で両断できれば、この男であっても……)
直接打ち合わなければ、勝ち目など無い。本能のような直感で、彼は魔王へと詰め寄っていく。
突如、左半身がふっと軽くなった。
左腕と左側に向けていた刀身が、綺麗に切断されていた。
青年(あの位置からっ……!)
魔王は悠然と立っている。先ほどまでと違うのは、剣を抜いているという事だけだった。
- 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:48:19.19 ID:r6iO5BVo0
- これってあれの過去話?
- 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:49:59.73 ID:6SKF7edp0
- 青年は柄の形をした魔力を回収して突進していく。
魔王もまたそれに応じ、素でによる構えで青年へと間合いを詰めた。
突風のように突き出された拳は、青年の頭を掠めると、
抉られるような痛みが走る。角が抜かれたのだろう。
青年(まだだ……まだ戦える!)
魔王の胸元を引き裂き、喉を狙う一撃へと進む。が、魔王の膝が青年の胴に深く沈む。
- 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:51:40.50 ID:6SKF7edp0
- 青年(あ……意識が)
青年(強……これが魔王か)
青年(角、もがれてるのに……頭突きかよ)
青年(これは……無理か……?)
青年(……)
青年(魔法……使えない……ら魔力だけ……残ってるんだよな)
- 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:54:50.01 ID:6SKF7edp0
- よろめき今にも崩れ落ちそうな青年は、地面を踏みしめ体勢を保った。
すると、青年の腕が魔物のような、悪魔のような、巨大で恐ろしい形に変貌した。
魔王(まだ、これほどの力が……!)
魔王(油断など、自惚れたかっ!)
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:56:40.22 ID:6SKF7edp0
- ……
青年「……」
青年「……く」
青年「懐かしい夢……いや、走馬灯かもしれない」
青年「魔王は……俺はどうなった」
全身が悲鳴を上げるのに耐え、重たい瞼を開けると、そこにはたくさんの兵士が平伏せていた。
青年が呆気にとられる中、鎧を着ていない家臣らしき人物が顔を上げた。
側近「魔王、ご就任おめでとうございます!」
- 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/10(金) 23:59:15.35 ID:6SKF7edp0
- ……
呆気にとられたままのニ週間。
国の魔術師達の魔法と、青年の生命力によって、角も翼も、左腕さえも完治していた。
そして今、魔王として国民に向けた演説へと駆り立てられている。
青年「待て、待て、俺は魔王になるつもりはないぞ」
側近「仮にそうであっても、これがこの国の掟。貴方もこの国の状況をしっているでしょ」
側近「せめて今しばらくだけでも、魔王をして下さい」
青年「おおい、側近、それでいいのかこの国っ」
側近「今まで政治は我々がしていたんです。変わりありません!」
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:03:09.15 ID:dgN14GNZ0
- ザワザワ
青年『……えー、あー……えー本日はお日柄もよく』
側近「民衆の面前で阿呆な事言わないで下さい!」ボソボソ
青年『あー……俺は、魔王になるつもりでこの国に来たわけじゃない』
青年『正直、この状況は驚いている。今現在も』
青年『俺は武力以外だと他人より秀でるものはないし、酷く田舎者だ』
青年『何が出来るわけでもないが……やれる事は一応やってみようとは思う』
青年『至らないとは思うが、しばらくの間はよろしく頼む』
「おおーーーーー!」
「「魔王! 魔王! 魔王!」」
青年にはその歓声が酷く遠くに聞こえた。
一時であれども、歪みから引きずり出された彼は、
変わりにふわふわと現実感のないこの世界に放り込まれたのだ。
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:04:59.96 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「で、何をすればいいのやら」
側近「一先ず、いて下さればいいです。政治的な事は分からないでしょう」
魔王「全くだ」
側近「軍事の体制の見直し、それと税金の見直し、ああそれと……」ブツブツ
家臣「それでしたらそこは……」ブツブツ
魔王(見直しばっかだな……先代は茶々入れて圧政にしていたのか)
- 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:06:15.39 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「暇だ」
魔王「重役は会議で魔王はハブですか」
魔王「……」
魔王「外の村とかどうなってるんだろうな……少し見回ってくるか」
魔王「書置きして、と。形だけだし、いなくなっても問題あるまい」
魔王「いざっ!」
- 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:06:55.57 ID:oarlvD13O
- 昇格したな
- 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:07:45.32 ID:dgN14GNZ0
- 侍女「……何をなさっているんですか魔王様」
兵士「見回りなら自分が行いますので、魔王様は身体の方をお労り下さい」
魔王「なあに、ちょっとした……」
魔王(こいつら翼もってるな……)
魔王「現状を知らない故、私はこれから郊外の村や町を視察しに行く所だ」
魔王「地理的に知らない部分も多い、ついて来てもらえると助かるのだが?」キリ
兵士「も、勿体無いお言葉! 不肖自分めが、同行させていただきます!」
侍女「……」ソワソワ
魔王「ついて来たければ構わんぞ。許可する」
侍女「やった!」
- 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:08:45.72 ID:dgN14GNZ0
- 侍女「この辺りは、農業区として広域に渡って村があります」
侍女「と言っても集落的にあるので、農業区そのものを一つの村として扱われています」
魔王「凄い広いな……これで一つの村か」
兵士「国の食料の殆どがここから捻出されていますからね」
魔王(これは期待できるな……)
- 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:10:19.86 ID:dgN14GNZ0
- 農夫「ま、魔王様にお越し頂けるなんてなんと光栄な事か」ビクビク
魔王「……?」
兵士「先代は軍事を優先しておられたので、あまり利益にならない者達には」ボソボソ
魔王「税金としては何を献上していた」ボソボソ
侍女「農業区自体はお金はあまりないですからね。主に特産ですね」ボソボソ
魔王「ふん……税金に乳製品といった所か。農夫、お前の改心の出来の物を持ってくるがいい」
農夫「は、はい……」
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:11:29.97 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「チーズか。どれ味見してくれよう」
農夫「……」
魔王(……これはっ!)
魔王「これらの取引先は……?」
農夫「……た、他国のここと、ここの国を……」
魔王(あの国程度にこれを渡していたのか)
魔王「下らん、連中にくれてやる位なら、全て税金として渡してもらおうか」
農夫「そ、そんな……!」
兵士「魔王様!」
魔王(よーし、予算案に茶々いれてやるぞっ!)
- 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:13:00.14 ID:dgN14GNZ0
- 側近「で、釈明はございますか?」
魔王「何、議会はまだ始まったばかり、いくらでも修正は効くだろう」
側近「なんですか、この農業区に対する阿呆な予算は……」
魔王「食育とは何なのか知っているかね、側近」
側近「……しかも、勝手に城外に抜け出して、何を考えているんですか!」
魔王「何も考えてなかった、とは言えないし、何て誤魔化すか……」ブツブツ
側近「胸中の発言がだだ漏れのご様子ですが?」
- 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:14:39.85 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「魔王が謹慎処分ってどういう事だ」
侍女「まあまあ、不貞腐れないで下さい」
侍女「先日頂いた物で作ったミネストローネとチーズを使ったフレンチトーストでございます」
魔王「……いい香りだ」
侍女「……あの、こんな簡素な物なのに、お叱りとかはお考えにならないのですか?」
魔王「演説したろう、田舎者だと。質素であれ豪華であれ、作ってくれた物は感謝していただくさ」
- 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:16:00.11 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「あそこの中庭……使われていないのか」
兵士「先代は園芸等、無駄な出費を酷くお嫌いになりましたから」
魔王「……ならば俺が使わせてもらうが、いいか?」
側近「構いませんが……何をなさるおつもりで?」
魔王「迷惑はかけんよ」
側近(中庭なんだし……普通の園芸で落ち着くよな)
兵士(この方なら……訓練場に使いそうだなぁ)
侍女(バラ園! バラ園!)
魔王(よっしゃ久々に作るか)
- 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:17:29.83 ID:dgN14GNZ0
- 側近「本当に中庭で何かやってる……」
侍女「本当に元気いっぱいですね、魔王様は」
側近「……変な事にならなければいいんですが」
侍女(立派な方だとう思いますが、あの方が魔王の時点でもう変な事な気が)
- 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:19:16.97 ID:dgN14GNZ0
- ……
兵士「報告致します。商業区北東、採掘現場にて落盤が発生しました」
兵士「現在、巻き込まれた魔族、魔物の救助を最優先に行っていますが……」
側近「復旧までには時間がかかりそうですね……魔王様?」
魔王「よっと」
「魔王様のお陰で救助も進み……本当にありがとうございます!」
「ま、魔王様! 落盤で塞き止められていた川が……!」
魔王(ここら辺の水の供給は十分だったな……)
魔王「うおおおお!」
「凄い勢いで農業区に水路が!」
「「魔王! 魔王!」」
- 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:22:29.79 ID:dgN14GNZ0
- 側近「いくら政治の中核になれないからといって、行動が腕白すぎます!」
魔王「はてさてさてはて、何の事やら」
側近「もう少し地に足をつけて……」
魔王が普段やっている事の一部
・中庭で野菜栽培
・災害時の炊き出し
・政治周りで徹夜する家臣への夜食作り
・山菜採り(経費削減)
側近「地に、足を……つけすぎだ! 所帯じみてる!」
侍女「でも、あたしはバラ園がよかったでーす!」
魔王「よし、空いている場所で園芸するか」
側近「どこの貴族の屋敷ですか、阿呆な事は止めて下さい」
- 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:22:49.76 ID:MdeqPwxV0
- やっぱ過去話だったか!
まとめ乗っけたほうがいいか?
- 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:25:25.40 ID:dgN14GNZ0
- グツグツ
魔王「……」
グツグツ
魔王「……! せい!」
魔王「っふ、アルデンテ……」
側近「仕事しろ」
- 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:29:30.05 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「なるほどな……南の大陸への渡来禁止はそういう事だったか」
兵士「おや……? 魔王様、ここしばらく書庫にいるようですが、何かお探しでしょうか?」
魔王「何という事の無い調べものだ。……ここの国はまだ征服派って扱いなんだよな?」
兵士「魔王様がご就任になってから、各国の協議はされていませんからそうなりますね」
魔王(各国への身の振り方も決めないとだな)
- 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:30:13.58 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「なるほどな……南の大陸への渡来禁止はそういう事だったか」
魔王(あの時言っていたグループは南の大陸の……人間と共存するか征服するかの見解によるものか)
魔王(大男の事だ……征服派で通っていたんだろうな……)
兵士「おや……? 魔王様、ここしばらく書庫にいるようですが、何かお探しでしょうか?」
魔王「何という事の無い調べものだ。……ここの国はまだ征服派って扱いなんだよな?」
兵士「魔王様がご就任になってから、各国の協議はされていませんからそうなりますね」
魔王(各国への身の振り方も決めないとだな)
- 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:30:36.49 ID:MdeqPwxV0
- あげ
- 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:32:45.87 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「ふう……」
側近「何を一人でトウモロコシを丸々一本食べているんですか」
魔王「まだ一本あるが……食べるか」
側近「何を阿呆な事を……頂きます」
魔王「何だかんだで、自分に素直だな」
側近「魔王様を相手にするにはこれが一番だと判断しました」
側近「そんな事より明日、軍事会議がありますがいかがしますか」
魔王「そうだな……自家製冷コーンスープでも馳走するか」
側近「いえ、そういう事では……楽しみです」
- 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:35:50.07 ID:dgN14GNZ0
- 「何で魔王様が訓練場にいるんだよ」
「最近鈍ってるんだそうだ」
「やべー、すげーつえーよあの人」
「仮にも先代を倒した人なんだぞ、当たり前だろ!」
魔王「我が国の兵士はこんなものか……」
魔王「少し扱くか」
「「!」」ビク
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:36:32.58 ID:MdeqPwxV0
- ……一応張っとくか
つhttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/doreisyou_saasaa_honjituno_medamadayo.html
- 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:39:09.56 ID:dgN14GNZ0
- 側近「兵士達から不満が殺到していますが、何をしたんですか?」
魔王「指導者らしく稽古をつけてみた」
側近「スパルタに、ですか?」
魔王「人に教えるのはのは難しいな。諦めて体で覚えてもらった」
側近「……条件を呑まなければ決起するとの事です」
魔王「内容は?」
側近「”魔王様のミネストローネを要求する”だそうです」
側近「職位、変えたらいかがでしょうか?」
- 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:40:45.45 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「商業、農業共にいい数字だな」
魔王「軍事も落ち着いてきている……。先ずは一段落着いた感じか」
魔王「各国に、挨拶回りとかしなくて良かったのだろうか……?」
魔王「急に面倒になってきたなぁ」
側近「阿呆な事言ってないで支度をして下さい」
魔王「出かける予定なんてあったか?」
側近「明日は他国との協議です。今日中に向こうに行きましょう」
魔王「待て、何を話すかとか全く分からんぞ」
側近「向こうで打ち合わせましょう、さあ、着替えてください!」
魔王「いや、お前、分かったから、剥くな剥くな!」
- 114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:48:05.86 ID:SmeCbwEkO
- 猿 一時休憩
- 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 00:50:01.85 ID:sELJ5NAxO
- こんな魔王になら従いたい!
- 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:03:16.29 ID:dgN14GNZ0
- 水の都市
側近「今回出席するのは、ここの水の魔王、山岳方面の国、山の魔王」
側近「後は樹海を領地とする深緑の魔王に、火山周辺を収める火の魔王。意外と少ないですね」
魔王「俺には、こういう二つ名みたいなのは無いのか?」
側近「便宜上、そう呼び合っているだけですが……ただ土地柄があまりない国ですからね」
側近「先代の荒ぶる魔王を受け継ぐかと」
魔王「使い古しかよ、嫌だな」
側近「では、所帯じみた魔王で」
魔王「ここぞとばかりにネチネチと……」
- 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:03:46.29 ID:oarlvD13O
- ふむふむ
- 118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:05:00.13 ID:dgN14GNZ0
- 側近「思えばあまりにも学が無さ過ぎる。どこの野蛮児でしたか貴方は」
魔王「中々の言い草だが……反論の使用が無いな、北西の島で暮らしていた」
側近「……あそこって人が住める環境でしたっけ?」
魔王「住める。命がけだが」
魔王「怪獣と呼べる大きな肉食獣が徘徊していてだな……」
側近「あ、ああ……あそこは死の島と言って、生きては帰って来れないという……」
魔王「はっはー、生きているぞ? ほれ、見直したか?」
側近「というより、化け物の類ではないかと疑いそうです」
- 119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:07:00.07 ID:dgN14GNZ0
- 側近「現状、共存派は征服派の説得だけしか活動しておりません」
側近「共存するにあたり、具体的な事はまだ貿易から、としか考えられていません」
魔王「んじゃ、共存派で」
側近「その心は」
魔王「別大陸まで面倒見れ……」
側近「阿呆な事言ってないで、しっかりした答案を用意しておいてください」
- 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:09:03.15 ID:dgN14GNZ0
- 議会
水の魔王「それでは議会を初めて行きたいのですが……」
深緑の魔王「あのおっさんの代行とか苦労している家臣だなぁ」
山の魔王「あいつが討たれたのを知らないのか。ここまで若いとは思わなかったが、こいつが今の荒ぶる魔王だ」
火の魔王「話し合いで片付く相手ではあるまい。この者の実力は本物なのだろう」
魔王(決定打の記憶が怪しいけどな)
水の魔王「初めての議会で分からない事は多々あるでしょうが、そちらの付き人と共に学んで下さい」
魔王(幼い容姿の割には突っ放した話し方と対応だな)
側近「まだ征服派である魔王様を警戒しているのもありますね」ボソボソ
魔王(読まれた、何というESP)
- 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:11:59.99 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「荒ぶる魔王様は今後、国をどういった方向で進めたいと?」
魔王「正直分からん」
側近(おおーい、まっおぉぉーー!)
深緑の魔王「っぷ、誰か梃入れして上げた方がいーんじゃない?」
魔王「……ただ、先代によって、国民の疲弊は相当なものなのは分かった」
魔王「今は小康状態であるが、より良い暮らしにして行きたい」
魔王「それが当面の課題だな」
山の魔王「なるほど……これではもう、荒ぶる魔王とは呼べないな」
側近「それでしたら所帯……モゴモゴ」
魔王「な、何でもない、荒ぶる魔王で構わない」
- 122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:14:00.15 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「それともう一つ、俺は共存派として国を進めていきたい」
側近(自分からあれを言うつもりですか!)
水の魔王「それは……我々としては喜ばしい事です。ですが、どういったお考えで?」
魔王「俺は教養とか無いから、そんな高尚な事は言えない。ぶっちゃけ、無理に共存しなくてもいいと思っている」
魔王「だがな……ずっと俺自身続けてしまったが、無意味な略奪や殺害はなくしたいんだ」
魔王「生きる為に、生き残る為の行為であれば許す、とまでは言えないが」
魔王「それは自然の摂理の上では仕方がない事ではないだろうか」
魔王「征服派は、その上にはない略奪を行うだろう。だから俺は、共存派として止めたいんだ」
「「……」」
- 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:16:00.53 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「貴方の考えはよく分かりました。立派な志ではありませんか」
魔王「だいぶ遠回りをしてしまったがな」
水の魔王「我々は、貴方を歓迎します。新たな共存派、仲間として」
火の魔王「同士であるならば受け入れよう」
山の魔王「いきなりの新任で大変だろうが頑張れよ」
深緑の魔王「青臭いけど仲間なら手助けするわ、よろしくね」
側近「どうなる事かと思いましたよ」ボソボソ
魔王「俺も心底ほっとしている」
- 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:17:59.80 ID:dgN14GNZ0
- ……
火の魔王「では、征服派への対応はこれで決定で構わんな」
水の魔王「そうですね……これで協議内容も終わりですね。本日はこれで解散としましょう」
山の魔王「ふ〜〜、肩が凝っちまったよ」
水の魔王「今日はいつもより時間がかかりましたからね」
深緑の魔王「それじゃあ、あたしは先にお暇するわ。こないだから苔の異常発生で忙しいのよ」
水の魔王「お忙しい中ありがとうございます。それでは皆様、お気をつけ下さい」
魔王「23,29,31,41,5,11,13,17,61……」コクリ コクリ
側近(……素数では睡魔に抗えないし、正しく言えてない)
- 125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:20:03.03 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「どう思われます」
火の魔王「調べた所、どうも死の島より渡ってきたらしいな」
水の魔王「あのような所から……」
火の魔王「生きる為だとか無意味だとか……その辺りが見てとれるな」
火の魔王「あの者には行き辛い世界だろうな、大陸は」
水の魔王「ええ……どんな思いで先代を討ったのでしょうか」
火の魔王「同士である事が答えだ。お前と同じ志じゃないか。良き友であれ」
水の魔王「言わずもがな、そのつもりです」
- 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:22:05.83 ID:dgN14GNZ0
- 侍女「おやつはチーズ入りウィンナーのロールパンです」
魔王「やっほぅー」
側近「阿呆な事してないで……」
侍女「はい、側近さんも」
側近「頂きます」
魔王(何気に、侍女の地位が上がってる気がする)モグモグ
- 127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:24:38.24 ID:fy2vRUvCO
- 支援支援
- 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:25:55.41 ID:SmeCbwEkO
- 猿 まさかの二時コースとか 仕事なのに
- 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:33:11.40 ID:sELJ5NAxO
- 支援!
- 130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 01:52:10.47 ID:oarlvD13O
- 書け書け
- 131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:02:00.76 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「……内陸だと海の魚がなぁ」
側近「また阿呆な事を……」
魔王「……特産……交換……」ブツブツ
魔王「行って来る!」
側近「え、ちょ、今日の会議には出席してもら……おぉーい!」
- 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:04:34.71 ID:dgN14GNZ0
- <<次の猿ったら仮眠行き>>
水の魔王「今日も平和のようで、一安心です」
水の側近「それはそうですが、何もご自身で見回りをしなくても」
水の魔王「長たるもの、自ら現状を知る必要が……あら?」
荒ぶる魔王「もう一尾! もう一尾!」
商人「ば、馬鹿言え、たかがチーズでそれ以上出せるか!」
荒ぶる魔王「最高級なんだって、味見してみろよ!」
水の魔王「……疲れているのかしら、私」
水の側近「残念ながら、幻覚ではないかと」
- 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:06:00.94 ID:oarlvD13O
- うむ
任せろ
- 134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:07:01.07 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「何をなさっているのですか……?」
魔王「ん? おおっと、あまりよろしくない姿をお見せした……」
魔王「沖の魚料理が食べたくなって貿易に来た次第でして」
水の魔王「……」
水の側近「……」
水の魔王「ああ……眩暈が」
水の側近「ま、魔王様……!」
魔王(え……俺そんな不味い事したか?)
- 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:09:01.02 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「……あら? 何時の間に城に戻ったのかしら」
水の魔王「何か、見てはいけないものを見た気がする……」
水の側近「お目覚めですか、魔王様」
水の魔王「ええ……私は先ほど、不思議な体験をした気がするのですが」
水の側近「日に当てられたのでしょう。お倒れになった時は寿命が縮まる思いでしたよ」
水の側近(言えない、交渉成立してほくほくした顔で、荒ぶる魔王が魚を抱えて飛んでいったなんて)
- 136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:10:04.93 ID:sELJ5NAxO
- 魔王が非常に可愛い
- 137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:11:10.58 ID:dgN14GNZ0
- 側近「随分と立派な魚ですね……どうしたんです?」
魔王「市場で競り落としてきた」
側近「……何処で買ってきたんです?」
魔王「ふ、俺だけの穴場だ、そいつぁ言えねぇ」
側近「水の都市で恥じ晒してきてませんよね、この阿呆」ギリギリ
魔王「ギブ! ギブ!」
- 138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:13:08.92 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「どうだ、たまには皆で鍋を突付こうか」
側近「城で鍋……国長と鍋……」
侍女「ま、まさか私まで、お呼び頂けるなんて」
魔王「兵士は見張りの番があるって断られたからな」
侍女「残念ですね……あ、この山菜、ここら辺では取れませんよね」
側近「……」ピク
魔王「……ま、まあな」
侍女「あれ? これも? これらって確か深緑の……」
魔王「で、では手にグラスをとってか〜んぱ……」
側近「さて全てをゲロって貰いますか、阿呆様」
魔王「ま、待て、国長に対する敬意を、いや、まずはその得物を……」
- 139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:15:22.73 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「失礼致し……な、何があったんですか? そんな縮こまってお座りになって」
魔王「他国での物々交換がばれて謹慎中」
水の魔王(ま、魔王なのに……)
魔王「物々交換って立派で正当な取引だよな? 何で怒られるんだ……?」
水の魔王(す、凄く落ち込んでる……何て慰めたらいいのやら)
- 140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:15:44.49 ID:0HGvG6AWO
- 支援!
猿にさせない
寝かせない
- 141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:16:37.07 ID:oarlvD13O
- ふむ
- 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:17:44.53 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「一部の国では、貴方の若さ故、いい目で見られていない事もありますのでお気をつけ下さい」
魔王「わざわざ、そんな事で……お手数おかけします」
水の魔王「征服派からも目をつけられているので、早急にお伝えしました」
魔王「助かります。ああ、よかったらこのトマト、貰ってってください」
水の魔王「え、ええ? い、いえ、そんな城の物をおいそれと頂くわけには」
魔王「中庭で栽培したものですのでお気になさらずに」
水の魔王「……じ、侍女達に?」
魔王「……? 自分でですが?」
水の魔王「……」
- 143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:20:28.24 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「……嫌な雨だ。氾濫とかは無いだろうが、弱く長く降るのは好かんな」
兵士「ま、魔王様! 外れの村が襲撃されました!」
魔王「馬鹿な……何処の賊だ! 被害は!」
兵士「現状、応援要請しか……近隣の警備隊と、城内の部隊が向かっています」
側近「魔王様落ち着いて下……ああ、もういないし!」
『征服派からも目をつけられて……』
魔王「本当に嫌な気分だ……」
- 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:22:51.34 ID:dgN14GNZ0
- 降りしきる地雨の中、魔王と部隊の者達は佇んでいた。
何も間に合わなかった。辺り一面は血の海が広がり、到着した者達以外は息をしていなかった。
「なんでこんな……」
「誰だ……どこの賊の仕業だ……」
「ああ……同僚が……こいつが何でこんな目に……」
魔王(違う……賊ではない)
魔王(何で気づかなかったんだ……あの時も……今回も……奴らは兵士だったんだ)
魔王(近隣の国の……)
- 145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:23:04.02 ID:0HGvG6AWO
- C
- 146 :1:2009/07/11(土) 02:27:13.86 ID:SmeCbwEkO
- 猿 約5時間後 再会予定 落ちたらお話無かった事に
- 147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:31:48.27 ID:0HGvG6AWO
- (´・ω・`)
- 148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:46:38.72 ID:TXTKwdqfO
- 誰か保守目安表を!
- 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:49:03.79 ID:0HGvG6AWO
- 俺のCがたりなかったんだ…
うっうっ…
牛丼たべてくる…うっうっ…
- 150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 02:54:11.77 ID:bRVgXwKJO
- ε=ε=┏( ・_・)┛
- 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 03:37:54.12 ID:ChTjWGBzO
- (゜Д゜;≡;゜Д゜)
- 152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 03:44:32.36 ID:pplYxAPZO
- O(><;)(;><)O
- 153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 04:05:22.92 ID:hRE8qPN2O
- 落としてたまるかよ
- 154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 04:30:32.14 ID:mQV3xawJO
- 保守時間の目安
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内
- 155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 04:36:28.68 ID:0HGvG6AWO
- 牛丼たべにいった
はずなのにハンバーグ食べてた
- 156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:01:36.92 ID:BB8OG2/UO
- ほしゅするよー
- 157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:50:31.41 ID:dgN14GNZ0
- 側近「やっと……追いついた……」
側近「魔王……っう! 何だ、これ」
魔王「……」
側近「魔王様、落ち着いて下さい! 今他国と争うのは……」
魔王「買い被るな……」
魔王「これだけの事されていて、心を穏やかに出来るほど、俺は聖人ではない」
魔王「どこの国かも分かっている……征服を推し進める蛮族がぁっ」
側近「……魔王様! 今戦争を起こすのは得策では……」
魔王「確認してやろう……真意によっては」
魔王「皆殺しだ」
- 158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:52:44.86 ID:dgN14GNZ0
- 時に真実は残酷の限りを尽くす。
国ぐるみ。首都の者達が率先して行ったいたのだ。
無駄な生産等に回る人も金もなく、賊の姿に、賊に紛れて略奪していたのだ。
魔王の咆哮は、首都を揺るがした。
事態に気づいた、この国の王、貪る魔王は本来の姿である飛龍となって、荒ぶる魔王と対峙した。
身体の大きさが違いすぎる。
故に、人々は決着は事も無く決まるだろうと予想していた。
地面に降ってきたのは飛龍の首だった。
- 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:55:00.31 ID:dgN14GNZ0
- 今は、各国の魔王が協議を行っている。荒ぶる魔王は、その結果を待つ身であった。
一夜にして他国の魔王と首都を滅ぼした罪を問われているのだ。
魔王(まるで死刑判決を待つ囚人だな……)
不思議と落ち着いている魔王に、側近は不安げな眼差しを送り続けていた。
魔王「そんな顔をするな……なるようにしかならんのだ」
側近「ですが……確かに魔王様にも非はありますが、これでは酷すぎます」
魔王「……」
- 160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:56:09.87 ID:0HGvG6AWO
- C
- 161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:57:00.00 ID:dgN14GNZ0
- 水の魔王「……今回の一件に関しては情緒酌量の余地があるとして」
側近「そ、それでは魔王様は……!」
水の魔王「ええ……ですが、次はありません。貴方が行った事がどれほど重大か、分かっていますね」
魔王「ああ……俺が魔王に向いていない事もな」
側近「ま、魔王様……」
魔王「進める所までは進むさ。今はまだ、な」
水の魔王「貴方は純粋過ぎます。人は皆辛くても、納得いかなくても、それを我慢します」
魔王「自分に正直。俺は我侭なのさ」
水の魔王「……」
魔王「……迷惑をかけました」
水の魔王「いえ……」
- 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 06:59:25.80 ID:dgN14GNZ0
- 側近「魔王様」
魔王「一つ、決めた」
魔王「失くそう。あんなふざけた事件、今後たりとも起こさせない」
魔王「どうすればいいかは分からないが、それも模索していくんだ」
魔王「俺は国の外で戦う……だからお前は国を守ってくれ」
- 163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:00:59.06 ID:0HGvG6AWO
-
- 164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:06:07.75 ID:dgN14GNZ0
- 魔王「これは契りだ。達成されるその日まで。この大陸の各国が手を取り合える環境」
魔王「全てを共存派とする日まで」
側近「……対立する派閥が無くなれば、本当にあのような争いがなくなるでしょうか?」
魔王「無理だな。だが、手を取り合える環境になれば……摩擦はなくなるだろう」
側近「久しぶりに魔王らしく見えますね」
魔王「悪かったな。……、グラスを持て」
側近「こう、ですか?」
魔王「不条理な争いを行われない、行わない世にすべく」
魔王「各国が調和されるその日まで、我々は戦い抜く事をここに誓いまして……っ乾杯!」
側近「……か、乾杯」
側近「何故乾杯を……?」
魔王「事ある毎に杯を鳴らそう。忘れない為にも、戒めの為にも……この契りを」
側近「なるほど……失礼しました。それでは改めまして」
魔王「我らの志が達成されるその日を願って」
魔王・側近「乾杯!」
子供「苦しいよ……誰か、助けて……」終
- 165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:09:01.45 ID:0HGvG6AWO
- ……!
乙!
もう少し読みたかった…かな
島の待ち人の話とか
- 166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:17:19.05 ID:RM8E1G0X0
- おつかれ
- 167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:17:21.22 ID:dgN14GNZ0
- 反省点
スレ立てた事
推敲無しの見切り発車
修正予定の文を修正せずに投下した事
gdgdだった事
過去話であれど、次の話に繋げる形でしか
オチが思いつかなかった事
無かった事にしたい思いで投下していた事
語彙ないのに、地の文を書いた事
- 168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:19:59.66 ID:oarlvD13O
- 素敵だった
- 169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:21:12.24 ID:C3qUBlfq0
- つーか>>167みたいなこと書いちゃったのが最大の反省点だと思うが
- 170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 07:22:37.95 ID:sLf97tyi0
- たしかにw
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